[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
曖昧に微笑み、クリスたちの元へ戻るよう伝えると、少年は元気に二人の方へ駆けていく。
「兄上!ケーキできたよっ」
「よう、こっちも終わったとこだ」
「ほんとっ?ウィル勝った?」
「当然だろ。明日はお前と乗馬の練習をするってさ。なあ、お兄様?」
「…仕方ありませんね。約束ですから」
「良かったな、アルム」
「うん!ウィルも明日、一緒に行こうっ」
「オレはムリ。明日は学校」
「え~~…」
焼きあがったケーキ。楽しそうに喋る子供たち。
しかしレフの気持ちは沈んでいる。
賢護石の時間は長い。周囲の人々がまたたく間に成長し、自分を置いて旅立っていくのを、何度も見てきた。
アメリアが自分だけ醜く老いると泣いたときでさえ、仕方ないことだと思えたのに。
……レフの知らないところで、成長していくウィルト。
いつまでもレフの心の中には、小さなウィルトが存在し続けている。王宮で治療を受けている間、レフ以外に頼る者も甘える者もいなかった頃のウィルトだ。
そのせいか、あそこで笑っている少年が、自分の全く知らない者のような気がして……寂しさよりも募っていく苛立ちに、レフはじっと目を閉じていた。
《ツヅク》