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【Will x Leff ⑤】 P:11


 曖昧に微笑み、クリスたちの元へ戻るよう伝えると、少年は元気に二人の方へ駆けていく。

「兄上!ケーキできたよっ」
「よう、こっちも終わったとこだ」
「ほんとっ?ウィル勝った?」
「当然だろ。明日はお前と乗馬の練習をするってさ。なあ、お兄様?」
「…仕方ありませんね。約束ですから」
「良かったな、アルム」
「うん!ウィルも明日、一緒に行こうっ」
「オレはムリ。明日は学校」
「え~~…」

 焼きあがったケーキ。楽しそうに喋る子供たち。
 しかしレフの気持ちは沈んでいる。

 賢護石の時間は長い。周囲の人々がまたたく間に成長し、自分を置いて旅立っていくのを、何度も見てきた。
 アメリアが自分だけ醜く老いると泣いたときでさえ、仕方ないことだと思えたのに。

 ……レフの知らないところで、成長していくウィルト。
 いつまでもレフの心の中には、小さなウィルトが存在し続けている。王宮で治療を受けている間、レフ以外に頼る者も甘える者もいなかった頃のウィルトだ。
 そのせいか、あそこで笑っている少年が、自分の全く知らない者のような気がして……寂しさよりも募っていく苛立ちに、レフはじっと目を閉じていた。
 
 
《ツヅク》