【Will x Leff F】 P:14


「リュイス様、エリクはどうなりましたか?あいつ、オレの友達で…」
「オレはここだよ」

 振り返ると、確かにエリクが笑みを浮かべて、軽く手を上げていた。

「彼が門兵と揉めているところに偶然、騒ぎを聞いたクリスが駆けつけてな。私が赴いた時にはもう、全ての手配を整えていた。ここへはエリクに案内をしてもらったんだ」
「クリスが…。そう、良かった」

 小さく頷いて、笑みを浮かべる。
 アルムも兄の姿を見て、少しは安心したかもしれない。

 ざわざわと人が集まっている。誰が声をかけるかと話しているのが聞こえ、ウィルは顔を顰めた。

「リュイス様。これ以上騒ぎが大きくなる前に、レフを王宮へ」
「そうだな。お前も来るだろ?クリスとアルムが待っている」
「…いえ、オレは一度家に帰ります」
「ウィル?」
「この格好で王宮へ行けって言うんですか?着替えたらすぐに行きますから」

 固辞するウィルに首を傾げながら、二人の賢護石は来たときと同じ唐突さで、シーサイドエンドから去っていった。
 必ず王宮へ来いよ、と念押しするリュイスに笑顔で応え、ウィルは診療所の片付けを始めたのだが……ふうっと、支えるもののないまま、身体が倒れていく。

「ウィル!!」

 慌てたエリクが素早く駆け寄り、床に激突する寸前でウィルの身体を抱きとめた。

「お前、ちょっとは休めよ。片付けなんか、みんながいくらでも…」
「…った」
「え?」

 苦しげに零れた声が聞き取れず、エリクはウィルの口元に耳を寄せる。誰に向かうでもない後悔は、苦い色をしていた。

「なにも、できなかった…おれは、何も…」
「ウィル?おい、ウィル!!」

 目を閉じたウィルの身体が重くなる。エリクが大人たちに、彼を家まで運ぶよう頼んでくれているのを聞きながら、ウィルは意識を手放した。
 気を失ったウィルの目の端からは、涙が零れ落ちていた。


《ツヅク》