ウィルの唇が、レフの首筋に触れる。ぞくっと身体を震わせて、レフはウィルの頭をそこへ押し付けた。
「私のものだ、ウィル…誰にも渡さない」
「レフ…」
「お前の存在をこの身に刻め。身体の隅々まで、お前という男を覚えさせろ。たとえお前が先に逝っても、私が追っていけるように」
「…わかった。優しくする」
「酷くしたって構わないさ。それがお前のやり方なら」
「そんなこと言って、いいのか?」
「いいだろ、別に。どんなことになっても、お前が治せばいいだけなんだから」
「…確かに」
ふっと笑ってレフを見上げる。
金色の瞳は熱っぽく濡れて、もっと熱いものを寄越せとねだっていた。
偉そうな態度でねだったくせに、いざ本当にウィルと肌を重ねるとなれば、やはり想像を超える世界だったのだろう。
服を脱がせるにも足を開かせるにも、いちいち恥ずかしがって、レフはウィルを困らせた。
「ぅ…んっ…ぁ、あ…」
「レフ…さすがにやりにくいんだけど」
「っる、さ…っ!ああっ」
ぎゅうっと枕に抱きついて、耳まで赤くなったレフは首を横に振る。どんな顔をしているのか気になる所だが、ウィルは目隠しをされていて、自分の手元も見えない状態だ。
どうしても見られたくないと。するなら目を閉じるか、目隠しをしろと喚かれて、こんな状況になっているのだが。
レフの後ろに指を挿し入れていたウィルは、溜め息をひとつ吐いて手を止めた。
「やーめた」
「っ…ウィ、ル?」
「こんなんじゃ、貴方に傷をつけそうで怖いし。いい加減もう、限界」
言うや否や、あっさり目隠しを外してしまう。イヤだと訴えるレフを無視して、ウィルは自分も着ていたものを脱ぎ捨てた。
現れた身体は、足が悪くろくに運動もできないとは思えないほど、鍛えられた身体。均整の取れた逞しい裸身を見て、レフの顔がいっそう赤くなる。
「ど、して…そんな」
「ん?…ああ。ま、それなりにね」
自分の身体を見下ろしたウィルは、何でもない事のように答え、脱いだものをベッドの下に放り出す。
「それなりって…」
「出来る限りの鍛錬はやってますよ。これでも医者ですから」
賢護石の研究が専門だが、王宮にいる限りは内科も外科も区別なく診ている。助けを得られない状況で診療を続ける時、最後に残るのは気力と体力だけだ。
それを、ウィルはよく知っている。
「昔さ。貴方の手術をしたとき、自分の体力のなさに腹が立ったから。それ以来、走れないとかなんとかいう言い訳を、やめたんだ」
「ウィル…」
「ないに越したことはないけど、もし今度、同じようなことが起こったとしたら。オレは一日でも二日でも、ぶっ倒れるまで貴方の命を繋ぐよ」
くすっと笑ってレフに覆いかぶさったウィルは、楽しそうに唇を触れ合わせる。
「ま、二度とリュイス様が来てくれるまで待つようなこと、しないけどね」
「…もう言わない」
「何を?」
「お前に、諦めろなんて」