あの時レフは、必死な思いで出来るだけのことをしていたウィルに、諦めなさいと口にした。それを今でも後悔しているのだ。
眉間に皺を寄せるレフに口付けて、ウィルは肩を竦める。
「そうしてくれるとありがたいな。何しろ貴方が死ぬ時は、オレも死ななきゃいけないわけだし」
「…ああ」
「一緒にクリスの治世を見るまでは、死ねないだろ」
嬉しそうに微笑んでいる表情は、少し幼く見えた。
子供の頃にもこんな風に笑って、ウィルがクリスの夢を酷評していたことを、レフは今さらのように思い出す。
「あの子はまだ、全ての国民が幸せになる未来を、夢見ているのか?」
「そうだよ。だから必死に頑張ってる。相変わらず自分のことは二の次にしてね」
「そうか…」
「貴方とは生きるも死ぬも一緒だと誓ったけど。クリスのことは最後まで見捨てないって、約束したんだよな」
「………」
「今でもあいつの言うことは理想論だと思ってるよ。遠からずクリスは、挫折を味わうだろう。それを見届けてやるのが、親友であるオレの役目なんだ。…嫉妬する?」
面白がって尋ねるウィルに、レフは少し考えて。そんなことはない、と首を振った。
「お前が付き合うというなら、私も付き合うさ。どうせお前は、私のものだし」
「もちろん。どんな約束をしたって、オレは貴方のためならクリスを切り捨てる」
「ウィル」
「オレは酷い男だって、言っただろ?…そういうわけで、レフ。酷いこと、するよ」
「え?」
クリスの話をしていたはずなのに、いきなりウィルはそう宣言すると、レフの腰を高く抱え上げた。
「ぅ、わっ」
体制を崩して思わず手をついたレフが、何をするんだと声を上げようとした時。口元をにいっと吊り上げたウィルが、レフの両足を肩にかけてしまった。
「ちょ、ウィル!」
「オレのやり方でいいんだよな」
「それは、あの、ちょっと待てっ」
「待たない」
きっぱり拒絶して、ウィルはさっきまで指入れていたところを舌先でつつく。そのままゆっくり、根元まで舌を押し込んでいった。
「ひゃ、う…やああっ」
小柄なレフは、まるで首から下だけ逆立ちをしているような体勢だ。なのにあまり苦しくないのは、ウィルがしっかり身体を支えてくれているから。
ただ、支えてもらってもやはり、不安定で。曖昧な浮遊感に揺らされながら、レフはシーツを掻きむしった。
「や、やあっ!ウィル、いやあっ」
怖いのか恥ずかしいのか、もはやわからない。ウィルは片手でぐっとレフの身体を支え、空いた手で前を掴んでいる。
濡れた舌に後ろを解されながら、ゆるゆると前を刺激されて、レフは全身を震わせながら身悶えた。
「あ、あっ!ああっ…や、やめっ」
言っても聞かないのは相変わらずだ。さんざん嬲られた後ろが、熱く疼き始めている。
ぞわぞわ身体を駆け巡るものの正体が、快楽だと気付いた時。レフは耐え切れず、白いものを吐き出した。
「っ!ん…っ、あ…あ」
力の抜けた身体を、ゆっくり下ろされる。ウィルは充分に濡れたそこへ、改めて指を挿し入れた。