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中心には、クリスのいるラスラリエ王宮。
兄はどんな顔で親友の診察を受けているのだろうと思うと、ちょっとだけ楽しくなる。
昔から兄をからかえるのは、ウィルだけだから。
情熱的に求め合った痕跡を見られていたら、無茶をするなと小言を食らっているかもしれない。
しょげている兄を思い、愛しそうに頬を綻ばせて、アルムは眩しい情景に目を眇める。
朝の光に包まれた、美しいラスラリエ。
積年の想い人を手に入れて、敬愛する兄の友人に見守られて。
アルムには、何も不安などなかった。
この美しい国に、兄ほど理想的な国王はいない。政務にはあまり関心がなく、全て賢護五石(ケンゴゴセキ)任せの父より、兄の方がずっと国王に相応しいのだから。
今の賢護五石と共に、クリスティンが統治するラスラリエは、どれほど幸せな国になるだろう。
たとえこの恋が終わっても、自分が彼の弟であることは、永遠に変わらない。
生涯独り身を通すことにはなると思うが、だからこそずっと兄を護り、支えていこう。
きらきらと輝く王都を、眩しげに見つめる。
何もかもが煌いて。
少しも不安などなくて。
あまりにも幸せだった。
……この時の第二王子アンゼルムは、行く先に待ち受ける運命を知らない。
ただ一人静かに、世界中のどこよりも幸せな王国を見つめて、明るい太陽の光に包まれていた。
《了》