「まあ、否定はしないがね。しかしあてもなく探し回るほど、私は酔狂じゃない。彼女が占いで貴方の居場所を言い当て、それを元に行動していたんだ」
惺は目を開いてシルヴィアを見つめた。占い師と聞いたときには、不審気だった表情が変わる。
「昨日は寸分の違いもなかったぞ。もっともそれは、彼が逃げなかったおかげだが」
「そう…貴方も大変ね。しつこい男に追い掛け回されて」
「本当にな」
「お金をばら撒かれて、居丈高に命じられていたの。恨まないで欲しいわ」
「わかっている。お互い、嫌な男に目をつけられたものだ」
「本当にね」
二人に睨まれた泰成だが、少しも自分が悪いなどと思っていない様子だ。
それより、と腕を組んでテーブルの中央を占めているカードに目をやった。
「占って欲しいのは、彼の探し人だ」
「…いいわ。私で役に立つなら」
「やけに素直だな」
「貴方が相手じゃなければね。わかっていることを教えてくれる?」
「ああ…しかし、僕にも大したことはわからないんだ」
「いいのよ。この人なんか、自分が昨日出会った男、としか言わなかったんだから」
「そうか」
少し考える素振りを見せ、惺は泰成に言ったのと同じような言葉を繰り返した。
「名前はエマ」
「エマ…女性ね」
「ああ。おそらく二十代か三十代だろう。彼女の遠縁に知り合いがいる。彼から預かったものを、その女性に渡したい」
「…それだけしか、わからないのね?」
「申し訳ないが」
「いいえ、大丈夫。そうね…じゃあ、願って。エマに会いたいと」
「姿がわからなくてもいいのか?」
「構わないわ」
惺の前でシルヴィアはいつも泰成に見せている通り、色彩豊かなカードを広げた。
それを纏めたり分けたりしながら、一枚一枚めくり始め……はっとして手を止めると、いきなりテーブルの上のカードを乱暴に床へ叩き落とす。
何枚ものカードが床へ散らばって、いびつな模様のようになっていた。
「シルヴィア?」
「な…なんでもないわ」
「何でもないってことはないだろ。そんな風にカードを乱雑に扱ったことはないじゃないか」
「何でもないのよ!黙ってて!」
椅子から立ち上がり、自分の手でカードを拾い集めた彼女は、顔色をなくしてもう一度同じようにカードを並べたが、最後のカードを手にしたまま震えだしてしまう。
何事かと見つめる男たちの前で、彼女は慌てたようにカードを一つにまとめ、テーブルに敷いていた布で包むと、それを抱いて立ち上がった。