ぶわって、目頭が熱くなってくる。
僕が唇を噛んだそのとき、ぱんっ!って誰かが手を叩く音がした。
思わず口を噤んだ僕は、ナツから目を逸らす。震える手を誰かに掴まれて、顔を上げたらそれは藤崎先生で。
「あ……」
どうやら今、手を叩いたのもこの人みたいだ。
「ちょっとおいで」
「なに…離してよ」
いい加減、自分でも馬鹿だと思うけど。意地張って振りほどこうとした僕に、先生は「いいから来なさい」って強い口調で言った。
静まり返った生徒会室。先生に引っ張られて歩き出した僕に、ナツの小さな声が聞こえてくる。
「わかんなくて、ごめんな…」
聞こえるか聞こえないかの、本当に小さな呟き。僕の苛立ちが、理解してもらえないことへの我がままだって、ちゃんとナツには伝わってたんだ。
どうしよう。ナツ絶対、自分のこと責めてる。
手を引っ張られながら、焦って振り返った僕の目に映っていたのは、まるで自分が当事者みたいに顔を青くして、倒れそうな様子のナオを宥めてる、ナツの姿。
その背中がちょっと震えてるみたいに見えて、僕は自分のしたことに、何も言い訳が出来なかった。