混乱するオレに、どんどんタケルの顔が近づいてきて。あっと思ったときには、唇が塞がれていた。
「ん…、んっ」
オレが抵抗できないのをいいことに、タケルは何度も何度もオレの唇を啄ばんで、大きな身体で圧し掛かってくる。
節張った指に髪を掻き回されてると、熱さで頭がぼうっとしてきた。
どうしよう、気持ちいいとか思ってる自分が信じられない。
「ふ…っぁ、や」
「千夏…千夏」
囁くタケルの手がゆっくり身体を辿り、薄いTシャツをまくったとき。やっと正気に返ったオレは、タケルを押し返した。
「待てって!」
息が上がる。うわ、顔熱いっ!
「イヤか?」
「だ、だからっ!イヤとかイイとか、そういうんじゃなくって、だから…っ」
逃げられないオレは、ただ首を振る。
お願いだから、タケル。
そんな急にオレを混乱させないで。
「オ、オレをスキってそんな…いつから」
「最初から」
「え…?」
「最初からだよ。初めて嶺華で会った時、俺の口を塞いでるアンタと、目が合ったときから」
……最初から?
一琉ちゃんを心配して嶺華に来たお前が見つけたのは、最初からアキじゃなくオレだったのか?
わけがわからず、ますます混乱してるオレをじっと見つめて、タケルは柔らかく笑った。
「考えてもわからないだろ」
「タケル…」
「俺だって自分がどうしてこんな、アンタばっかり欲しいのか。アンタしか目に入らないのかわからないんだ。今日、うちで初めてまともにアキさんと会ったけど、アンタに似てるとしか思えなかった。…ずっとこうして」
両手で頬を包まれ、触れるだけのキスをされて。全部受け止めてくれるような、おおらかな表情でオレを見てくれる。
「触れたかった…アンタだけ…」
「タケル…」
「…好きだ」
ぎゅうってタケルに抱きしめられて。オレは身体の力を抜きながら、ぼろぼろに泣いていた。
守って欲しいとか、助けて欲しいとか、そんなこと全然望まない。タケルにしてほしいことなんか、何もない。
ただ、そばにいて欲しくて。
迷っては立ち止まるオレの、弱いところも情けないところも、全部見ていて欲しくて。それだけで。
「千夏?」
抱きしめたまま、オレの背中を撫でていてくれたタケルは躊躇いがちに、また名前を呼んで。そろりと手を動かした。
「っ…!ま、待て!そういうのはっ」
背中から撫で下ろされた手に、むき出しの足まで触られ、オレはまた恐慌状態に陥ってしまう。
「でも、千夏」
「誰が千夏だふざけんなっ」
お前はずっと先輩って呼んでろ!
真っ赤になって逃げようとしたオレは、いきなりの身体の変調に、がくっとタケルの腕の中に落ちてしまった。
「っ!!!」
な、なんだ?!身体が……!
オレを受け止め、勝手に抱き直したタケルも、首を傾げてオレを見つめてる。
「どうした…先輩?」
「なんか、身体が…っ」
「身体?」
身体っていうか、これ、この状態ってもしかして。
じっとオレの身体を見ていたタケルが、不思議そうにまた、身体に触れてきて。さすがに気付いたんだろう。余裕を窺わせていた顔が、ちょっと赤くなる。
「千夏っ」
力一杯抱きしめられ、オレは首を振ってじたばたともがいた。
「ばかっ!嬉しそうな声出すなっ」
「でもそれって」
「違う!こ、これはたぶん、アキがっ」
なにやってんだあいつはっ!
いきなり熱を持ってしまったそこが、帯びた熱を勘違いして、勝手に固くなっていく。自分ではどうしようもない。
「アキさんが何だよ」
「だ、だから…オレたちは双子だけど、共有してるのは痛みだけで、相手の痛いところが熱くなるから、その」
しどろもどろに言い訳をするオレが逃げるのを許さず、タケルはオレをソファーへ押し倒してしまった。
ちょ、マズいって!離せよっ。
「じゃあ今、兄貴はアキさんと…」
「うっさい!それ以上言うなっ」
「でも、そういうことなんだろ?」
「そうかもな!わかったんなら離せって」
「イヤだ」
「おま、おいっ!」
暴れるオレの手を一纏めに拘束して、タケルは勝手に熱を持ってしまっているそこを、服の上からいきなり掴んだ。
「っ…!や、タケルっ」
「放っておけないだろ、これ」
「ばか、やめっ」
「触るだけだよ…最後まではしないから」
なんだ最後って!ふざけんなっ!
必死で逃げようとするけど、ガタイで上回るタケルが本気で押さえ込んだら、オレにはどうすることも出来ない。
そのうちにタケルは、オレを組み敷く体勢に慣れてしまった。余裕でオレの身体を自分の下に安定させて、それで。
掴んでたところを握り込むと、唇を重ねてきたんだ。
「っ…ん、んーっ!」
お前、それズルいだろっ。
暴れるオレをものともしないで、重ねた唇から舌を差し入れてくる。