【その瞳に映るものG】 P:08


 熱いとか柔らかとか、考えてる余裕もない。押し戻そうとするオレの舌はタケルに絡めとられ、息も自由も、なにもかも奪われる。
「や…っ、やだって、タケル」
 せめて身を捩ろうとするんだけど、タケルの手がそこから離れて、Tシャツの中に忍び込んできたら、その手の熱さにびくって身体が震えてしまって。
「ふ、っ…あ、ぁっ」
 唇から零れたのは、甘ったるい声。
 誰だよっ誰の声?!
「ナツ…千夏…」
 囁く声に耳が痺れる。体中が熱くて、どうしていたらいいのかわからなくて。タケルの手がどこを触ってるかとか、全然わからない。
「力抜いて…楽にしてればいいから」
 偉そうに指図すんな!、って思うんだけど、タケルにそう言われたら、どんどん身体から力が抜けていくんだ。
「あ、あっ…や、ぁ…あっ」
 声が止まらない。自分ではどうすることも出来ない。
 首筋にタケルの息がかかるのを感じて、余裕を見せているんだろうタケルに、嫌味のひとつでも言ってやろうと思ったから。首をねじって目を開けたんだけど、そこには全然余裕なんかなくて、必死な顔で眉を寄せてるタケルがいた。
「タ、ケル…ああっ、あ」
 苦しげな顔を、少し紅潮させてる。繋ぎとめられていた手をそっと離されたけど、もう暴れることは出来なかった。
「ああ、んっ…タケル、タケル…っ」
「千夏…好きだ」
「ぅ、んっ…あ…っ」
 Tシャツを胸の上までめくられても、もう僅かに首を振るくらいしか出来ないよ。もどかしくて手を伸ばし、タケルに縋ったら、すげえ嬉しそうな顔をするんだ。
 ずっと好きだと思ってた。
 タケルのこういう、優しい表情。
 ひょっとして、もしかしたら。オレだって最初から。
「苦しくないか?」
「ん…うん…」
 オレの返事に気を良くしたのか、タケルは今までよりずっと大胆に、オレの身体を探り始める。
 胸に吸い付かれて、舌先でくりって弄られるのが、イヤで仕方なくて。首を振るけど否定の言葉は出てこないし、タケルの髪に差し入れたオレの指は、もっとってねだるみたいに、引き寄せてしまうから。
「ああ、んっ…あ、あっ」
 も、ダメだ。逆らえない。
 下着ごとタケルにハーフパンツをずらされたオレは、無意識に膝をタケルにすり寄せてしまう。
「せん、ぱい…千夏」
「んっ…や、あっ…やだ、タケルっ」
 そんなとこ、直接誰かの手で握られたことない。怯えるオレが泣きながら首を振ってると、タケルは身体を近づけてくれて。オレの手を取り、自分の方へ導いた。
「アンタだけじゃ、ない」
「っ、タケル…あぁっ」
 手に押し付けられたものに、びっくりしたけど。タケルのそこは、とっくに熱く固くなってるんだ。
「ふ、っん、ああっ、あ…あ」
 同じなのかって、そう思ったら変に安心してしまって。タケルがしてくれるのと同じように、オレも夢中でそれを握り、手を動かしていた。
「っ…千夏…」
「あ、あっ…タケル、タケル…な、きもちい?…おまえ、も?」
 ちゃんと感じてる?オレがそうであるように、お前もオレに触られて、たまんなくなってるの?
「うん…イイよ、俺ヤバい…」
「あ、あぅ…んっ、オレも、タケルっ」
 背筋がぞくぞくする。考えてたことがすうっと白くなっていくんだ。
 追い詰めようとでもするみたいに、タケルの手が早くなっていく。同じようにしてやりたいんだけど、手に力が入らなくて、上手く出来ない。
 こんなときにそんなこと考えるの、オカシイかもしれないけど。
 オレは昔から人よりちょっとだけ器用だったから、こんな風に思うように何かが出来ないのって、初めてだ。
 もどかしくて苛々する。
 そんなオレを察したのか、タケルはオレのものから手を離して、急に唇を舐めてきた。
「先輩、離して」
「っ、でも…」
「いいから。オレがするから、手…こっち回して」
 促されるままタケルの首に手を回した。タケルはゆっくりオレを抱き起こすと、自分の膝に座らせて、自分のとオレのとを、一緒に握ったんだ。
「あ…っ、んっ」
 大きな手で掴まれてるそれを、無意識に見てしまった。ああ、なんか…視覚の暴力だろ、それっ。
「タケル、やっ」
 オレに見せるなとばかり、抱きついてやる。そしたらタケルが優しく頭を撫でてくれた。
「千夏…信じろよ」
「タケル…?」
「好きなんだ。千夏が好きだ」
 その言葉を囁きながら、タケルは握ってるものを力強く上下に扱き出した。
「ああっ!あ、あ!ああっ」
「ん…っ」
 固く目を閉じ、タケルに縋りつく。頭の中がタケルで一杯になっていた。
「あっん、あっ!タケル、タケルっ」