【その瞳に映るものH】 P:02


 わかってるけど、そこがいいんだよね。
 せっかく自分の生徒が恋人になったんだから、アキの在学中にこういうことはやっておかないと。
 人が来るかもしれない。誰かに見られたらぼくのクビが危ない。……こういうのって、昼過ぎあたりのメロドラマに
ありがちなシチュエーション。
 でもそういう緊張感が、いっそうぼくを煽るんだ。だってこんなこと出来るのは、あともう半年ぐらいなんだし。
 顔を上げたアキと唇を触れ合わせる。深く浅く、アキの差し出す舌に吸い付いてると、いつの間にかベルトを外されてた。
「アキ…」
「ん?」
「今日、両親が帰ってくるんだ」
 ずっと日本を離れてるぼくの両親。音楽家である彼らは、9月以降に控えた日本でのツアーのために、今日の夕方ごろに帰ってくるらしい。
「そう…じゃあしばらくは、自由な時間も難しいね」
「ん…だから、アキ…」
 早く、もっと。焦らしてないで。
「そうだね。いっぱいしよっか」
「っ…ぁ、ああっ」
 手が忍び込んでくる。握り込まれると、その先にある快楽を予感して、震えが止まらなくなる。
「先生が毎晩僕を思い出して、泣いちゃうくらい」
「ばかっ」
 くすくす笑うアキに、下着の中の手で腰を引き寄せられた。思わず壁に手をついて、目を閉じる。伸びてきた手にひょいっとメガネを取り上げれると、潤んだ視界にアキの真っ白な制服が眩しい。
 自分の指を舐めてるアキの顔が艶めかしくて、どうにかなりそうだ。
「淋しくなったら、自分でここ弄って。僕の名前呼びながらしてよね」
 後ろに指先が入ってくると、まだわずかな嫌悪感で冷や汗が浮かんでしまうけど。それはすぐに大きな熱に変わる。アキの指が、中を広げて強く擦った。
「あっ、あ!…やっ」
「時間決めて、一緒にしようか」
「バカ言ってないで、早くっ」
「だ〜め。またナツに嫌味言われちゃうでしょ?」
 アキがこう言うのは、初めてした時、ぼくに締め上げられたアキの痛みが、双子の弟の方に伝わってしまったせい。
 互いの痛みがわかるうという双子は、そんな感覚をもっているくせに、自分たちのことを不思議だとは思っていなかった。
 テレビで見るような不思議な体験をしたことがない、なんて平然と言うけど。ぼくにとっては十分に不思議で、やっかいな共感覚だ。
 翌日彼は真っ赤になりながら、アキに文句を言ったらしい。それからというもの、アキの丁寧な愛撫には磨きがかかった。
 おかげでぼくは、男を受け入れる辛さをあまり、知らないでいるんだけどね。
「ん、んっ…あ、ああ」
 指を増やされる分だけ、愛撫を増やされる。力が入らずに、ずるずる壁を落ちるぼくを、アキが支えてくれていた。
「ね、先生…ちょっと降りて。後ろからするから」
「や…っ、このまま」
「服が汚れるってば…お願い、言うこと聞いて?すぐにあげるから」
 仕方なく荒い息をつきながら、身体をアキに預ける。素早く入れ替わる体勢に、頭が追いつかない。
 確かにね……前にそのまま、アキの上に乗っかって>ヤッた時は、お互いに服を汚してしまって。どうやって帰ろうかと、二人で笑うしかなかった。
 でもあの日以来、実はこの化学準備室に着替えを置いてあるんだけど。まだアキには黙ってる。今日も教えてやらない。
 壁に手をつき、がくがくの足で立ってると、アキの身体が背中にぴったりくっついてきた。後ろにあたってるのが、熱くて固くてたまらない。
「入れるよ、先生…力抜いて」
「あ、あ…っ」
「声上げちゃダメだよ…いい?」
 アキの声、掠れてる。
 いつもギリギリまで余裕を見せるけど、ちゃんと同じように、ぼくの身体を欲しがってるんだって。この声が教えてくれる。
 緩く頭を振るぼくの口を、後ろからアキの手が押さえた。ごめんね、と小さく囁いてくれる優しさが愛しい。
 ぐっと突き当てられた先の部分が、狭い後ろを割り開いて中へ入ってくる。
「んーっ!んんっ!」
 押さえられた手の中に悲鳴を上げた。ゆっくりと一気に、奥まで突き入れられる。でも痛いと思うより、同時に流れてくる快感が、ぼくの五感を鷲づかみにしていた。
「せんせ、大好き」
「んんっ…は、あぁ…ん」
 アキの身体はまるで、甘い蜜の塊。
 中で溶けて、身体中に染み込んでくる。
「あっ…あ、あっ」
 揺すぶられる動きに、やらしい声が止まらなくなる。でもここ学校だし、と最後に残った理性で必死に抑え込むから、余計に身体が熱い。
 アキの手は最初、ぼくの身体を撫でて前を掴んだり、胸を弄ったりしてるけど。しばらくすると余裕をなくして、強く腰を掴んでいるだけになる。
 こうして後ろからされてるの、まるで無理矢理みたい。顔が見えない状態はやっぱり、少し不安な気持ちを煽られる。