あの人が俺の服を着て、俺の布団にくるまって寝たんだって思ったら、考えないようにしようとしても、身体がいうこときかないんだ。
「っ…千夏、千夏…」
手をもぐりこませて、もう熱くなってるものを握り込む。最近こういうときに使うのは、必ずブレスをつけてる左手。
自分でも浅ましいって思うけど、やっぱどうしても、興奮するんだ。千夏の姿をリアルに思い出せるから。
千夏のシャープな身体は、触れるとびっくりするぐらい柔らかかった。
色が白くて、でも息が上がってくると少し赤くなっていくんだ。
……一度だけ千夏の身体に触れた。
あの人は泣きながら俺にしがみついて、可愛い声を上げてた。
タケル、タケルって。救いを求めるように、何度も何度も名前を呼ばれて。喘ぐ声を聞いてるだけで、気が遠くなりそうで。
拙い仕草で俺のものを握りながら、気持ちいい?って、聞いてくれたんだ。
お前も気持ちいい?って。幼くなった表情が、頼り切った目で俺を見ていた。
自分のものに千夏が触れてるってだけで俺はもう、たまんなくてさ。すぐにでもイキそうなのを必死に耐えたんだよ。
「ん、ふっ…、ちな、つ」
あの時の千夏の媚態を思い描きながら、手を上下に動かす。
甘い声で啼いて、俺の身体に抱きついてきた。胸に吸い付いたら身体中をびくびく震わせて、俺の頭を引き寄せてた。
全然慣れてない千夏。
普段は何でも出来るのに、こういうことには、真っさらな反応を見せてくれる。
薄く唇を開いて声を上げる姿が艶めかしいのに、いやらしくないんだ。
どうしよう、どうしようって困ってる姿が可愛かったな。
「ぁ…っヤバ…」
枕もとのティッシュボックスから、何枚か引き抜いて服の中へ押し込む。
千夏は、服の上から俺の背中に爪を立てて、震えるようにして吐き出した。俺の手の中でイッて、崩れるみたいに寄りかかってきた。
涙を浮かべて俺を見たあと、恥ずかしそうに顔を背けた千夏。耳まで真っ赤にして泣いてた。
「っ…!」
ぐっと強張った身体から、ようやく力が抜けて。俺は汚れた紙を丸めると、ベッドの下のゴミ箱に捨てる。
「千夏…」
―――好きだよ。
本当に好きなんだ。アンタだけ。
アンタのカッコ良くて頼りになるところも、寂しがって泣きそうになる顔も。
全部好き。どこもかしこも愛してる。
早く俺を好きになればいいのに。もっとたくさん触れたいよ。アンタの細い身体に舌を這わせて、声を上げさせたいんだ。
器用にパソコンを操る指で、俺に縋りついて欲しい。みんなを導く声で、俺の名前だけ呼ばせたい。
「…千夏が好きなんだ」
声に出して言うだけでたまらなくなる。
俺は自分の身体を見下ろし、苦笑いを浮かべた。
一度だけじゃ全然、足りないみたいだ。