たぶんゆるくゲル化するだけなんだろうけど、これってもう少し成分弄ったら、まるで市販品の食用ゼリーみたいになりそうだ。
そんな風になったら面白いよね。同じ化学を担当してる伊藤(イトウ)先生なら、どんな見解を持たれるかな?……あ、温度の問題もあるのか。家庭用の給湯器じゃ、細かな調節は難しいし。
ぶつぶつ考えていたぼくは、湯気でメガネが曇ったとき、ようやくハッとして湯船を見た。
予定を越える湯量に、慌てて蛇口を閉める。え〜…どうしよう。
もうちょっと少ない湯量で試したいんだけど、一度出したお湯を捨てちゃうのはもったいない。
しばらく考えて、余分を洗濯機へまわすことにした。時間もお湯も無駄がなくて、一石二鳥でしょ。
自分の洗濯物と一緒に、思いついてアキの服も放り込む。裸で寝てるアキ。目が覚めて着る物がなったら焦るかな?
悪戯心を起したぼくは、部屋に置いてあるアキの着替え、勝手に置き場所を変えて隠してみた。アキが全裸で歩き回る間抜けな姿、ちょっと見たいじゃない。
ばたばたとぼくが走り回ってる間も、全然目を覚まさないんだから。
洗濯機の回る音を聞きつつ、服を脱いで浴槽に近づく。
わくわくと入浴剤を入れ、説明書に従ってゆっくり手で掻き回してると、本当にお湯が重たくなってきた。
面白い!
しかもこれ、色が淡いグリーンになってきて、ライムの香りがしてる。全然甘さのない爽やかな香り。
さすがナツくんだね。ぼくの好みをよくわかってる。
掻き回すお湯がまったりしてきた所で、中へ入ってみた。
わ〜……とろとろだ!身体にゼリーがまとわりつく感じ。腕を沈めてゆっくり上げると、お湯がゼリー状になってるのがよくわかる。
しかもぬる目のお湯なのに、とろみのせいで、身体があったまってくる。
なによりマッサージでもするみたいに肌をこすると、ゼリーの感触が気持ちいい。
いいなコレ。日本でも手に入らないのかな?いくらくらいするんだろ。
「…楽しそうだね、先生」
夢中になっていたぼくは、低い声にようやく顔を上げた。
いつの間に起きてきたのか、アキが全裸で浴室のドアに寄りかかってる。案の定、着替えを見つけられなかったみたいだ。
ざまーみろ!って思ったけど、引き締まった細身の身体は全然、間抜けでもカッコ悪くもなかった。
「起きたのかい?」
「なんで起してくれないの」
「あのねえ…怒るよ?!何度起したって起きなかったのは君じゃないかっ」
まったく。自分のこと棚に上げてっ!
「ずーっと起してたんだから。これ以上は面倒見られません」
「だって…しょうがないじゃない。眠かったんだもん」
「じゃあ寝てろ。起きてくるな」
「酷いなあ」
「気の済むまで寝てなさい。一人でも十分楽しいよ」
つん、と背中を向けてしまう。ぼくが悪いっていうの?さんざん手間かけさせたくせに。
アキは笑いながら浴室へ入ってくると、ドアを閉めて。バスチェアーに座り、ぼくのことを背中から抱きしめた。
「そんな意地悪言わないでよ。ごめんね」
「反省が足りない」
「ごめんてば…起きたら先生はいないし、服はなくなってるし、起きるはずの時間過ぎてるしさ。寂しかったよ?」
「自業自得でしょ」
「おまけにお風呂覗いたら、先生は一人で楽しそうにしてるし…」
アキは片腕を浴槽に浸けて、感触を確かめるみたいにゼリーをすくった。
「わ、ほんとにゼリーなんだ」
「入ってくるな。ぼくは一人で楽しんでるんだから」
「も〜冷たいこと言わないでよ。ね?一人より二人の方が楽しいって」
言いながら、またゼリーをすくって、アキはそれをぼくの胸の辺りに塗りつける。
「っ…!や、ダメっ」
「なんで?気持ちいいいでしょ。僕もバスタブの中に入れてよ」
「あ、ぁっ…や、ちょっと」
「先生、胸弱いよね…すぐ尖ってくる」
「ばかっ」
さっきまで純粋に楽しんでたのに、起きてくるなりこの子はっ!
でもそんな風にされたら、弄られてる胸はすぐこりこりになってくるし、ゼリーの温熱効果も倍増しで、身体が熱くなってきた。さっきまで気付かなかったけど、この入浴剤って、けっこうヤラシイ?
「一緒に入ろ?せんせ」
「アキ…」
「お願い。反省してる。ごめんなさい。これからは気をつける。だから…ね?」
耳の後ろに唇を押し付けてくるアキに、ぼくは仕方なく頷いた。ありがと、と嬉しそうに囁くアキは、ぼくの頬に口付けてから、立ち上がる。
広くもない浴槽に男が二人なんて、ちょっと窮屈なんだけど。アキに抱きかかえられる体勢は嫌いじゃない。
ぬるぬるしたゼリーの中でアキに身体を撫で上げられ、ぼくは思わず熱っぽい息を吐きだした。
「ぁ…は、あっ」
「…や〜らし。なに考えてんの?」
「ん、んっ」