「すごいねえ、これ。固まるのに時間かかった?」
いやらしく手を動かすくせに、アキの口先はわざとぼくをはぐらかす。全然反省なんかしてないじゃない。
このガキ、どうしてくれよう。
くっついてないと狭いでしょ?なんて言いながら、どうでもいい会話を続けて、ぼくの足を触ってるんだ。寝起きのくせにアキの下半身は反応してない。
―――ムカつく。
「アキ…」
「なに?せんせ。どうしたの?」
面白がってる声。
ぼくは溜め息を吐いて、ゼリーの中で自分のものを握った。恥ずかしげもなくそれを上下に擦り始めるぼくに、アキは驚いてるみたい。
「あ、んっ…ああっ」
「ちょっと、いきなり何してんの」
思いつきで始めたけど、この中でするの気持ちいい。ぼくはいつもより淫らがましく声を上げて、背中をぐいぐいアキに押し付けた。
「やああん、ああ、ん、きもちい…」
「先生…どうしたの。いつもは自分でしてるとこ僕に見られるの、嫌がるじゃない」
「アキ、ね。指いれて…中、弄って」
「ええ?!ちょ、せんせ?」
「んんっ…あっん…ねがい、アキっ」
腰を揺らしてアキに擦り付けながら、甘い声で訴える。何事なんだと動揺していたアキは、気を取り直してぼくに足を開かせた。
「なに恥ずかしいことしてんの、先生」
「だって、きもちい…あ、んっ!やあっ」
昨日の情事と、このゼリーのとろみを利用して、アキの指が奥まで入ってきた。
「ひゃう…んっ、ああっ」
「気持ちいいの?手ぇ早くなってるよ」
後ろから耳朶をやわやわ噛まれ、舌先を耳の中へ入れられる。ぞくっと身体を走ったものに身を任せ、ぼくはアキの手首を掴んだ。
「あ、あっ…がまん、できないっ」
「え…せんせ?」
「指ふやして…気持ちいいとこ、触って…もっと、ねえ…あん、やっ…」
「…あのさ。先生?」
「アキ、ああん、はやく、アキぃっ」
「いやそれはいいんだけど…この入浴剤ってオカシな成分、入ってないよね?」
困惑気味のアキは、入浴剤に媚薬でも入ってるんじゃないかと、疑ってるみたい。入ってないよ、そんなもの。
何?けっこう冷静なの?……もっと煽られてくれないと、面白くないじゃないか。
「アキ…アキ」
甘く名前を呼びながら、ぼくは狭い浴槽の中で、身体を反転させた。快楽に涙が零れてる自覚はあるから、ちょうどいい。
「せんせ…」
抱き合うように向かい合うと、首を傾げているアキは、それでも少し頬を赤くしてる。うん、いい感じ。
「もう、ダメ。我慢できない…イキたい」
「え…待ってよ。僕まだ…」
「後ろも前も触って…アキの手で…ぼくをイかせて…」
「手でって、そんな」
「イヤ?こんな浅ましいぼくは、嫌い?」
「まさか。大好きだけど」
「じゃあイかせて…辛いんだ」
「先生…」
「お願いアキ…おねがい…」
目を閉じてアキの唇を舐める。首に抱きついたまま、何度もお願いだから、と囁いた。足のあたりに触れるアキのものは、もう固くなってるけど。
アキの手でイきたい、と訴えるぼくのお願いを、仕方なくアキは聞いてくれる。
「…わかったよ。じゃあとりあえず、してあげるから。イッて」
「ん…ありがと」
ちょっと残念そうに、アキは手を回してぼくを抱き寄せた。そのまま本当に、中を擦って射精を手伝ってくれる。
「ああっ!あああっ、や、あ!」
アキの頭を抱え込み、思う存分声を上げた。……あれ?そういえば換気扇回ってるから、もしかしてマンションの廊下に声が漏れたりしてるかな……まあ、いいか。
「ひ、う…あぁぁっ!」
身体を突き抜けていく快感に全身を任せて、背中を反り返らせる。思わずその勢いで倒れそうになると、アキが慌てて抱きとめてくれた。
「危ないよ先生、滑るから気をつけて」
「ん…うんっ、ぁ…ぁ」
あ〜、気持ちいい。最高。
アキと唇を重ね、そっと離す。
「気持ち良かった?」
「うん…アキ、ありがと」
「どういたしまして。じゃあさ…」
「さて」
何か言いかけてるアキの言葉を最後までは聞かず、ぼくは浴槽の淵に手をかけて立ち上がった。
「…え?先生?」
「うん、わかってるよ。待ってて、髪洗っちゃうから」
「いやあの…あれ?」
おろおろするアキを尻目に、ぼくはシャワーを出して髪を洗い、身体を洗った。
ゼリーとはいえ、別にお菓子じゃないから、そんなべたついたりはしないけど。浸かってるときはともかく、さっぱりしたいじゃない?
―――上がるときは、ね。
「あーさっぱりした」
「さっぱりって…」
「じゃあアキ、ぼくはもう出るから」
「…えええ?!ちょ、コレは?!」
すっかり臨戦態勢になってる自分のものを指差し、アキは驚愕で唖然としてる。
なに言ってんの。余裕をもって起したのに、起きなかったのは君でしょ。