―――ごめんナツくん。嘘だ。
今の武琉が許しを貰ったりしたら、歯止め利かなくて大変だと思うけど。
でもこうでも言わなきゃ、君はいつまでも逃げるでしょ?
「…大丈夫かな」
「武琉のこと信用してやって」
無責任でごめんね。
アキほど慣れてないとは思うけど、まさか武琉も君相手に、無茶はしないと思うから。一応は焦るなって言ってきたし。あまり君が痛い思いをしないよう、それなりの準備も教えてきたから。ね?
ナツくんは真っ赤になったまま、溜め息を吐いて。照れ笑いを浮かべた。
……しまった、可愛い。ほんとごめん。
「明日、タケルに会うんだよ」
「そ、そう」
「ちゃんと話してみる。ありがと一琉ちゃん」
アキと同じカタチの顔に、全然違う表情を浮かべて。ナツくんは柔らかく微笑んでる。その顔を見てると、少し罪悪感が過ぎってしまった。
大丈夫かな武琉……いや、あの子は実年齢より大人びてるから、きっと大丈夫。
「遅くにごめんな。アキのことよろしく」
「わかった…そうだナツくん。寝入ったアキを起こす方法って、本当にないの?」
気を取り直して、前にも聞いたけことを改めて聞いてみる。
ナツくんを見てたら、やっぱりアキに起きてほしくなってきたんだ。今日のこと、いろいろ話したい。
ナツくんは困った顔で天井を見上げた。
「ん〜そうだなあ…オレ今まで、無理に起したことないんだよね」
「緊急の時はどうするの」
電話がかかったり、急に出掛けることになったり、そういうこともあるよね。
「別に…どうしてもだったら、オレがアキのフリしてた。誰も気付かないし。だってあいつさあ、一度寝たらつねっても叩いても起きないだろ?」
「うん、やってみた」
「起し始めて1時間くらいで起きるのはわかってるから、家の者はみんな諦めてる」
「甘すぎだよ君たちは…」
濡れたタオルで口と鼻を塞ぐぐらいのこと、やってみればいいのに。
溜め息をつくぼくを見て、ナツくんは苦笑いを浮かべた。
「まあ、興味があるなら色々やってみればいいんじゃね?一琉ちゃん相手だったら、アキも怒れないだろうし」
「そうだね」
「…加減はしてやってくれよな。死なない程度でよろしく」
くすくす笑うナツくんに、肩を竦めて答える。濡れタオルは却下だな。
「じゃあ、おやすみ一琉ちゃん」
「…おやすみ」
音を立てないよう、そうっと閉められた扉。ぼくは中から鍵をかけて、アキのいるリビングを振り返った。
ナツくんの許可も下りたことだし、だったら色々やってみようか。家族では出来ない、恋人のぼくにしか出来ない方法。
音を立てずにリビングへ戻り、起きる気配のないアキを見下ろす。
さて……どうしたものかな。
「ア〜キ?」
声をかけたぐらいじゃ起きないことは、わかってる。
「アキ〜、起きないの〜?」
「ん〜…せんせ、おかえり…」
あれ?ちゃんと返事した。
「起きたのかい?」
「ん〜」
「目ぇ開けてよ」
「ん〜…うん、おきるよ〜…」
言いながらまた、寝息を立て始める。
こういうまどろみの時間が気持ちいいらしくて、アキは返事をし始めてからが長いんだ。それこそナツくんが言っていたとおり、1時間くらいかかってしまう。
でも逆に言うとこれって、何しても起きないってことだよね?
ぺたりとそばに座り込む。きれいな顔を覗きこんだ。
「ち〜あ〜き?お〜きて?」
「…ん〜」
「起きなかったら、好きなようにするよ」
「う〜ん…ん〜」
寝てるのが気持ちいいの?アキ。
じゃあそれ以上に気持ちいいことしても起きない?
膝立ちでアキを覗き込み、上から順番にシャツのボタンを外していく。ベルトを外し、ジッパーを下ろして。上向きに寝てるアキの服、開けられるだけ開けてやった。
あんまり焼けないという、白い肌に手を貼り付ける。首筋から肩、胸までをゆっくり撫でていく。
「ねえアキ…どこまでしたら起きるかな」
顔を寄せて唇にちょん、と軽く口付けてみた。これくらいで起きるはずない。
肌を撫でながら、いつもされてるばかりの胸に吸い付いてやった。
「んっ…ぁ…せん、せ」
「起きて?」
「う、ん」
舌先で弄ってると、そこは少しずつ固くなってくる。感じてるアキは意識もないのに、他の誰でもなく、ぼくのことを呼ぶ。
思い付きだったけど、面白い。
無防備なアキの身体を、好き勝手に触れることなんて、めったにないんだから。
「アキ、ねえ…気持ちいい?」
「せんせ…」
「言ってよ。気持ちいい?」
起きてたら絶対に言ってくれないようなこと、言わせたい。半覚醒のまどろみにいる素直なアキ。
片手でちょっと強めにつねりながら、もう片方をくりくり舌で押しつぶすと、アキは熱い溜め息を吐いた。
「きもち、い…」
「うん。もっとして欲しい?」