力が強かったのか千夏は痛がるけど、でもそこは固くなって、俺の舌先を押し返してくる。
自分と同じ平たい胸が、柔らかいようにさえ感じて、俺は千夏の言葉を深く考えることも出来ずに、必死に吸い付きながら、そこを強く揉んでいた。
「やっ…タケル、いた…いっ」
はっとして顔を上げる。
本当に痛かったみたいで、眉を寄せた千夏が唇を噛みながら、身体を震わせてた。
「ご、ごめんっ!先輩っ」
「ん…っ」
「あの俺、力加減とかよく、わかんなくてその…痛かったよな…ごめん」
どうしよう。このままじゃ俺、千夏のこと傷つけるかも。
うろたえて固まってしまった俺を見上げた千夏は、何度も息を吐き出してから、少し眉を下げて笑った。
「ひょっとしてお前…初めて?」
「…うん」
「そっか」
ゆっくり身体を起こし、千夏は俺の首に手を回すと、こつってお互いの額をくっつける。
「わかった」
「先輩…」
「じゃあ、約束しろ」
「え?」
物凄く近いところにある千夏の瞳。俺を見つめて柔らかい曲線を描いてる。
「ちゃんと名前呼んで?…お前さっきからオレのこと、先輩って言ってる」
「あ…」
しまった。いつものクセで、つい。
「ごめん、千夏」
「うん」
ふふって、甘い声で笑った千夏は、俺に優しく触れるだけのキスをしてくれた。
「あと、な。…オレが痛いって言ったら、キスして慰めて…」
「ち、なつ」
「痛いのは覚悟してるけど、タケルが夢中になって、オレを忘れてんじゃないかって不安になるから…キス、して。教えて」
ただ欲に流されて、身体に溺れてるんじゃないってこと。ちゃんと千夏と一緒になりたくて、してるんだってこと。
忘れるわけないけど、不安になるという千夏の気持ち、置き去りにしないようにしたい。
「約束、するよ」
「うん」
「なんか俺…ごめん。余裕なくて」
もうちょっとちゃんと、出来るつもりでいたんだけど。自分が情けなくて謝る俺の髪を、千夏がきゅって引っ張った。
「謝らなくていいよ」
「千夏…」
「余裕がないのはお互い様、だろ。だから謝らなくていい。代わりに…な?」
悪戯っぽく笑った千夏が、俺の唇をぺろっと舐める。その仕草が可愛くて、一度落ち着いた熱が蘇った。
うっすら開いたままの千夏の唇を塞ぐ。
舌を差し入れて、舌先で上顎に触れてると、千夏に舌の裏側を舐められた。
なんかやらしい。それをしてるのが、いつも人の上に立って冷静な指示を飛ばす千夏だと思ったら、ギャップがありすぎて信じられない。
細くした舌先で、俺の舌を弄ってる。ずっと憧れていた千夏とセックスしてんだって、裸を見たとき以上のリアルさが沸き上がってくる。
すげえ嬉しい。なんか泣きそう。
隙間もないぐらい抱き合って、俺たちはお互いの唇を貪った。息が出来なくて苦しいのに、離したくない。
「ん、ふ…タケ、んんっ」
何か言いかける千夏の口を塞いで、どんどん身体を押し付けて。密着した肌が汗ばんできたのに気付いたとき、ようやく離してあげられた。
「はっ…ぁ、はあ」
「千夏」
「あ…は、はあ…タケル、待って」
「うん」
肩で息をしてる千夏は、絡みついてたお互いの足を恥ずかしげに見つめて、かあっと耳まで赤くなる。
「千夏?」
「お前…なにガチガチにしてんの」
つんつん、って。千夏にそこを指先でつつかれた俺は、びっくりして身じろいでしまった。
「う、わっ…触んなよ」
「痛そう」
「ちょっと、待ってって!」
もう限界まで張り詰めてるのに、千夏に触られたりしたら、出ちゃうだろっ。
「オレに触られるの、イヤか?お前は勝手に触ったじゃん」
「あの時は、だって」
前に千夏を強引にイカせたこと引き合いに出され、顔が赤くなってくる。
だってあの時は必死だったんだよ。理性が先に吹き飛んじゃったから、なけなしの知識と余裕をかき集めてたんだ。
俺が拗ねて反論しようとしたら、千夏はそれを許してくれずに、触れていたものを握り込んで、手を上下に動かした。
「あ、ぁっ…ちょっと!」
「出せよ…そんなままじゃ、辛いだろ」
「千夏、待って」
「イヤだ。待たない」
俺の顎の辺りを舐めながら、素早く手を動かしてる。
アンタ……前ん時はずっと動揺して震えてたし、今日だってさっきまで、震えて泣いてたじゃん。なに?その変貌は。
「なあタケル…気持ちいい?」
ぺろりと唇のあたりを舐めながら聞いてくる。吐き出す息の熱さに、千夏も感じてるんだって気付いたら、余計に追い詰められてきた。
「ん…っ、千夏」
自分よりずっと細い肩を、引き寄せる。
「言えよ。オレにされて気持ちいい?」
「…っ、うん。気持ち、いいっ」
「そっか…良かった」
やけにほっとした声で呟いた千夏は、甘えるみたいに身体を預けてくれた。
その時やっと気付いたんだ。