【その瞳に映るものM】 P:09


 俺のものを握ってる手は、すげえ大胆でやらしい動きをしてるんだけど。
 もう片方の、俺の太腿に縋ってる手。細かく震えてる。
 そうだよな……怖いって、言ってた。
「千夏、離して」
 俺のものを擦ってる手を、上から強く握り締める。
「タケル…?」
「俺がする」
「…オレの手じゃイヤか?」
「違うよ。嬉しいけど、物理的にほら、俺の方が手ぇデカいじゃん。だから一緒に握れるし」
 ぱっと手を開いて見せて、笑みを浮かべた。アンタにしてもらうのは、また今度ってことにしといてよ。
「一緒にイきたいんだ。だから、お願い」
「タケル…」
 俺を見上げる千夏の顔が、急に柔らかく変わった。俺のことを全部受け入れてくれてる表情だ。
 俺が初めてだって知った千夏は、少しでも安心できるよう、自分から動いてくれたんだろう。
 前の俺がそうだったように、自分の中の余裕をかき集めてくれた。
 アンタのそういう優しいとこが、好きなんだよ。
「じゃあ…して」
 掠れた声。やっぱアンタの声、ヤバい。
 そっと手が離れていく。千夏は両腕を俺の背中に回して、肩の辺りに頭を預けてくれた。
「好きだよ、千夏」
「…うん」
 千夏の腰を引き寄せ、俺のを触ってる間に勃ち上がっていたもの、自分のと一緒に握る。
 もう限界になってる俺に追いついて欲しくて、最初から強い力で扱いた。
「あ!あっあっ、ん、ああっ」
 先に刺激を受けていた俺の先から溢れてるものを、塗りつける。擦れ合うたびに千夏は頭を振って、声を上げる。
「千夏…ちなつ」
「ああっ、やあっ…あっあっ」
 白い肌が少しずつ染まってきた。これ前も見たな……でも今日の方がずっと艶めかしい。
 俺は千夏の腰を引き寄せていた手で、顔を上げさせ、唇を塞いだ。千夏は待っていたとでも言うように、頭を傾け、深く深く舌を差し入れてくる。
「ん、っ…は、千夏」
「はぁっ、あん…やああっ」
 少しのズレを埋めるように、千夏のものの先を強く擦った。一瞬のうちに強張った身体。熱いものを吐き出したのは、ほとんど同時だった。
 
 
 
 力が抜けた千夏の身体を、ゆっくりベッドへ寝かせる。
 お互いの余裕のなさとか、本気とか確認できて、千夏の恥じらいが少しはマシになったのは嬉しいんだけど。
「……っ」
 思わず生唾飲み込んで、俺はしばらくベッドに座りこんでしまった。
 喜悦の中で震えてる身体。ふにゃりと柔らかくなったそれは、昨日まで俺が当り前に寝ていたベッドで横たわってる。
 僅かに染まった肌。千夏が息を吐くたび震える肩。なにもかもが想像を絶する。あんまりにもきれいで、触ったら汚してしまいそうだ。
「千夏…」
 囁くように呼ぶと、千夏は顔を背けたまま、躊躇うように片足を上げて、膝を自分の片方の足にすり合わせた。
 白い胸とか腹とか晒してんのに、まるでそこを見るなとでも言ってるみたい。
 手を緩やかに口元まで引き寄せ、千夏は吐き出す息を堪えるように、甘く指を噛んでる。
 しても、いいのかな。
 本当にこの人と、繋がっていいのか?
 ぐずぐず悩んでしまう俺を誘う、優しい声が、誰より愛しげに俺の名前を呼んだ。
「タケル…」
 ああ、千夏も俺を求めてくれてるんだ。
 切ない響きに導かれ、覚悟を決めてベッドを降りる。机の引き出しから、小さなケースを取り出して蓋を開けた。
「しても、いいよな?」
 千夏のそばに戻って確かめる。恥ずかしげに目を閉じた千夏が、頷いてくれる。
 焦る自分を抑えながら、ケースの中身を指に塗りつけた。
「…それ、なに?」
 甘い匂いが気になったのか、不思議そうに聞いてる。
「うん…慣らさないと入らないから」
「あ…」
 千夏の顔がみるみる赤くなった。ケースの中身は軟膏みたいな、淡い色のクリームだ。指に取ると、体温で溶けていく。
「なんでお前、そんなの…どこで?」
「えっと…兄貴が、くれたんだ」
「一琉ちゃんが?」
「うん…用意してないと大変だからって。なんか色々使ったけど、コレがいいから使えって。昨日来た時にくれた」
 サバけた性格の兄貴は、両親に見つからないよう、俺にこれを渡してくれた。千夏が痛い思いをしたら、それが伝わるアキさんも大変だからって言って。
 俺、本当はまさか、こんなに早く使えるとは思ってなくて。実はさっきまで忘れてた。
「千夏?」
 いっそう真っ赤になって、千夏は俺の枕に顔を伏せてしまう。
「あの…」
「…オレどんな顔して、アキに会えばいいわけ?もう、信じらんない…」
「あ…ごめん。考えてなかった」
 痛みが伝われば、アキさんには絶対に知られる。だってアキさんと兄貴のときも、二人がしてるって千夏に伝わったんだ。
 今日はアキさんと一緒にいる兄貴。
 俺たちのことがわかったら、これを俺に渡したこととか、アキさんに言いそう。