【その瞳に映るものM】 P:11


 萎えてしまってる千夏のものに手を添えて、ゆるゆると動かしながら、指先を少し入れてみる。ぬめってるせいで第一間接くらいまで楽に入ったけど、その瞬間、千夏は身体を強張らせてしまう。
「やっ!やああっ」
「力抜いて…大丈夫だから」
 最初から上手くいくわけないんだって、兄貴に言われた。だからとにかく焦るなって。千夏をよく見てろって。
「ごめんね千夏…大丈夫だよ…」
 囁きながら指を抜き差しする。少しでも力の抜ける瞬間を計って、深くしてみる。
「あ…あ、んっ…やっぁ」
 千夏の声が止まらない。涙混じりの声でずっと喘いでる。その声があんまり辛そうじゃないことに甘えて、ゆっくり二本目の指を差し入れた。
「やああっ!やだ、やっ!タケルっ」
 首を振って嫌がる千夏は、せっかく柔らかくなっていたそこを、またぎゅうっと固く締め付けた。
「千夏…辛い?」
 俺が問いかけるのに、千夏はそうじゃないって首を振ってくれる。
「つらく、ないけど…っ!なんか、やだ…変になるっ」
「いいよ、なっても」
「あっ…ああぅ、やっ」
 ちょっとだけわかってきた。
 指を増やしたり、深くしたりすると、千夏はそこを締め付けて嫌がるけど。前を擦りながら抜き差ししてるうちに、慣れて力を抜いてくれる。
 ―――焦っちゃダメなんだ。
 千夏の状態をちゃんと見てなきゃ、わからなくなる。
 昨日の夜、酔っ払っていた兄貴は、俺の部屋へ押しかけて、色々教えてくれた。
 指が三本ぐらい入って、楽に抜き差しできるようになるまでは、どんなに欲しくても絶対に入れるな、とか。
 自分の兄貴の口から、そういうことを赤裸々に語られるってのが、俺にはどうにも耐えられなくて。「もういい」って逃げたけど、もっとちゃんと聞いておけば良かったかな。
「たける…たけるっ」
「うん、なに?」
「やっ…やだ…ぁっ!タケル来て、顔見せてっ」
 小さな子供みたいに、せがまれる。俺は指を入れたまま、掴んでいた前を離して千夏のそばに手をついた。
「千夏?…どうした」
 泣き顔を覗き込む。枕を掴んでいた手が離れて、俺は千夏に抱きしめられた。
「タケル…っ」
「うん」
「オレ変だ…変に、なってる」
「なってない。可愛いよ」
「でも、でも…っ!あっん、んんっ」
「可愛い、千夏。好きだよ」
「タケル…っ」
「大丈夫だから。な?」
 少しでも不安を取ってあげたくて、千夏に口付ける。もっと深くってねだるように、千夏の舌が俺の口の中を懸命に舐めていた。怖いって思う気持ちを、全部注ぎ込んでるんだ。それがわかったから、俺も千夏の舌を強く吸って。
 吸いながら、指を増やした。
「んんっ!んーっ!!」
 背中に爪を立てられたけど、全然痛いなんて思わない。辛いのは千夏の方。俺は千夏にこんな思いをさせてるのに、それでも身体を繋ぎたいって思っちゃうんだ。
「ごめん…ごめんな千夏…」
 すごく辛そうで、いっぱい泣いてる。
 でもそんな千夏を見てる俺の方は、どんどん興奮してきて、入れたい、出したいって、そればっかりになってきてる。
 これって本能なのかな?
 千夏に会うまで、俺は自分が淡白なんだと思ってた。セックスとかAVとか、あんまり興味のない自分を、おかしいのかと思ってたことさえあるのに。
 千夏に会ってからは、何度も想像した。
 千夏の身体を押さえつけて、自分のものを捩じ込むとこ、何度も想像して自分で抜いた。
 妄想はあまりに都合のいいもので、俺の頭の中の千夏は、何をしても気持ち良さそうに喘いでたんだ。
 現実は全然違う。千夏はずっと泣いてるし、その声は悲鳴のようでさえある。
 なのにこっちの方が、ずっと俺を興奮させるんだ。触ってもないのに、勝手に勃ってガチガチに固くなって。これで千夏の細い身体を貫くんだと思ったら、可哀相だと思う反面、どうしようもなく熱が上がってくる。
 中へ入れた指を、何とか動かした。
 千夏の中、すごく熱い。
 ずっとこうして触ってたい。
「あ…ああっ!やっ、なに?!あーっ!」
「え?千夏?」
「いやっいやあっ!!そこヤダ、タケルっ触んないでっ、ひっああっ」
 急に千夏の身体がガタガタ震えだした。
 あまりの変化にびっくりして身体を起こすと、さっきまで半勃ちだった千夏のものが、ぐっと頭をもたげてる。
「…ひょっとして、ここ。気持ちいい?」
 さっき指先が触れていたところ、丹念に探してみる。
「ちがっ…やだ!あっ…あっ、んんっ」
 気持ちいいわけじゃないと否定してるけど、そこを擦ってると、千夏はあっというまに果ててしまった。
「あああっ!…っは、ぁ…はっ…は」
「千夏…ここがイイんだ」
「もうやだ…おかしくなる…オレ、だけ」
 またぼろぼろと涙をこぼして、千夏は両手で顔を覆ってしまう。