【その瞳に映るものM】 P:12


 一人だけ気持ち良くなってイッてしまったことが、受け入れられないみたいだ。
 俺は千夏の後ろから指を抜いた。
「んっ…」
「ごめん、千夏。俺もう、入れたい」
 限界だよ。これ以上我慢してたら、俺の方がおかしくなりそうだ。
「ごめんね…」
 それ以上どう言っていいか分からず、弛緩してる足を撫でる。何度も何度も撫でてたら、顔を隠していた千夏は、その手を開いてくれた。
 千夏、可愛い……ほんとに可愛い。
 真っ赤になってる目。閉じきらない口元から、僅かな泣き声が聞こえてる。
「もうやめたい?…でもごめん、俺…」
 どうしても最後までしたい。俺の痛いくらいになってるこれ、千夏の中に入れさせてほしい。
 どうしようって、身動きできないでいたら、千夏は不安そうに俺を見て、ゆっくり手を伸ばした。
「タケル…」
「うん」
「あ…あやまらなくて、いいから…」
「千夏?」
「だから、手…握って」
 ひっくひっくって、しゃくりあげて泣いてる千夏。俺たちは固く手を繋いだ。
「これでいい?」
「ん…あと、キス」
 覆いかぶさって唇を重ねる。ちゅって音をさせるだけの、軽いキス。そうしたら千夏は、すごく嬉しそうに微笑んでくれて。
 こくん、と頷いた。
「え…?」
「…いいよ、タケル」
「でも」
「ちゃんと約束、覚えてる?」
 千夏の名前を呼んで、痛がったらキスで慰める。さっき言われたこと。
「…覚えてる」
「忘れ、ないで?」
「うん」
「…じゃあ、いいよ」
「千夏…」
「入れていい…最後まで、しよ」
 たどたどしいくらいの言葉。いつもの完璧な千夏からは想像出来ないセリフ。
「いいの、か?」
「うん」
「ほんとに?」
「しつけーぞ」
 俺の頬を軽くつねって、千夏はふわっと柔らかく笑った。

 さっきまで慣らしていたおかげで、閉じきっていない千夏の後ろに、自分のものを宛がう。閉じた目の上に手を置いてる千夏は、何度も息を吐き出していた。
 ちょっとでも緊張を逃がそうとしてる姿が、どうしようもなく愛しい。
「千夏…痛かったら、痛いって言って」
「うん」
「その、やめられないと思うけど…ちゃんとキスするから」
「わかった」
「入れるよ…」
 俺の言葉に、千夏の身体は一瞬強張ったけど。でもすぐに柔らかくなる。
 意を決して身体を押し付けた。
「ひっ!あああっ」
「っ…ちな、つ」
 ぐりっと先を押し込んだだけで、千夏の身体は痛みに悲鳴を上げた。
 予想を超えていたんだろう。がくがくと震えだしてしまう。
「やああっ!ったい、やだあっ」
「千夏…千夏、落ち着いて」
 俺の声なんか届いてない。無意識に逃げようとする肩を抱いて、口付ける。
 すっかり萎えてしまってる千夏のものを強く扱いた。
「あああっ!や、やだっ!いたいっ」
「ごめん…千夏」
 狭いそこは俺を拒絶して、強く締め付けてくる。でも首を振って嫌がる千夏を見てると、止まらない。
 ああ、ごめん。止まらないんだ。
 痛いくらい締め付けるそこに、無理矢理身体を進めてしまう。
「ひ、ぃっ!ああっ」
 もうこれ以上、入らない。でも中途半端に突っ込んでるだけでも、体中の熱がどんどんそこへ注がれていってしまう。
 歯を食いしばろうとする口の中へ指を入れて、強引に開かせた。
「あっああっ!」
 止まらない声を聞きながら、身体を押し付けてると、少しずつ少しずつ、千夏の中へ自分のものが入っていく。
「や、ぁ…ああーっ!」
「っ!…ぁ、あ」
 千夏が根元まで俺のものを咥え込んでくれたと同時に、俺は果ててしまっていた。
「はっ…はっ…は」
「ご、ごめん。俺…イッちゃった…」
 マジ情けない。
 全部千夏の中に入ったって、わかった瞬間、身体を電気みたいなのが走って。あっと思う間もなく、一人で達してしまった。
 反対にすごく辛そうな千夏は、そこを萎えさせてしまってる。
「た、ける…たける」
「ごめん、ほんと…あの、ごめんね」
 何度も謝る俺の言葉が届かないのか、千夏は苦しげに何度も息を吐いて。身体を震わせながら、俺を見上げる。
「…はい、った…?」
「え?」
「おまえの…ぜんぶ、はいった?」
「うん。入ったよ…全部入った」
 ぎゅうぎゅうに狭いそこは、一度イッてしまった俺のものを締め付けてて、痛くてとても気持ちいいとは思えなかったけど。
 千夏と繋がってるってわかるだけで、泣きそうなぐらい嬉しいんだ。
「あ…あ、あ」
「入ったよ、ありがと…愛してる」
「タ、ケル」
「うん…触って。俺、千夏の中にいる」
 肩にしがみついてた手を取って、繋がりに導いた。千夏は涙に濡れた目を閉じたまま、そこを探ってる。
「わかる?俺の」
「…ん、うん」
「千夏の中、あったかい」
 本当にその時は、もう何も望まないって思ったんだ。十分だって。