ばん!と顔の横で枕を叩いた蓮は、千歳を睨みつけて叫んだ。
「どうして自分の気持ちに向き合わない!俺はずっと待っていただろ?!」
「え…」
目を見開いたまま、千歳は身体を固くする。押さえつけていた手を離し、蓮は千歳の上で、着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
「何でもするんだったな」
「ちょ、ちょっと、待って」
「もう待ってられるか」
「なんで?どうして…やだ、蓮っ」
均整の取れた逞しい身体。腹筋の割れたきれいな体を見せ付けられて、真っ赤になった千歳をじっと見下ろし、蓮は口元に不適な笑みを浮かべる。
「俺が好きだって、言えよ」
「な…なんで、それを…」
「知ってるかって?知ってるさ。お前はわかりやすいからな」
蓮を見つめるだけで赤くなり、蓮に触れられるだけでパニックを起こす千歳。
わからない方がどうかしている。
「言えよ、千歳。無理やりするぞ?」
「ま、待って!…ちょっと待ってよ…知ってたの?いつからっ?!」
「何をだ」
「僕がまだ、その…蓮を」
好きだということ。
十年経っても、想いが変わらないこと。
震えながら尋ねる千歳を見下ろし、蓮は肩を竦めている。
「最初から」
「最初って…」
「俺の前で倒れた時から」
再会した日のことだとわかって、千歳は赤い顔をいっそう赤くすると、それを手で覆い首を曲げて顔を背けた。
「信じらんない…なんで黙ってたんだよ」
「俺から言うのか?…十年も放置された俺が、妻子持ちのお前に?」
「だって僕は…って、ちょっと!何してんの?!」
乱れた浴衣をいっそう開いて、千歳の胸を露にした蓮は、そこに唇を押し付ける。びくっと震えた肩から、引っかかっていた浴衣が落ちた。
「や…っ!やだ、蓮…お願いだから、やめてっ」
「断る」
「だって、こんな…あ、ぁ」
胸の辺りからわき腹まで、撫でるように触れる蓮の手に、ぞくぞくっと背筋が震えてしまう。
でも、どうしても戸惑いが消えない。
千歳は驚愕してひっこんだ涙を再び溢れさせ、首を振って嫌がった。
だって蓮は、一度自分を振ったのだ。
役目を終えた温室を見つめながら、そんなことを言うとは思わなかったと。告白を信じられないと、そう言ったではないか。
十年待っていたと言う蓮。
だったらどうしてあの時、千歳の気持ちを受け入れてくれなかったのか。
「あ、あ…あっん、やだ、ぁっ」
「千歳」
「やだ、こんな…こんなの、ひどい…」
胸の突起に舌を伸ばしていた蓮は、泣きじゃくる千歳を見て、仕方なく身体を起こした。