丁寧にそれを貼ってくれる。
熱を持った足首に、ひやりとしたシップが気持ちいい。
蓮だって虎臣の吐いた嘘で迷惑したはずだ。京都から南国荘まで、夜通し車を運転してくれたのだと、千歳が言っていた。でも彼は、虎臣を責めようとはしない。
「どうせバカなガキだと思ってんだろ」
八つ当たりでしかない言葉にも、ちらりと視線を上げただけで、蓮に怒っている様子はない。
苛立った虎臣が眉を吊り上げた。
「何とか言えばっ!」
「現状、お前のやったことは、愚かなガキの所業でしかない」
「っ…わかってるよ!」
「だが俺は、別にお前をガキ扱いしてるわけじゃないさ」
脱がせていた靴下や靴を丁寧に履かせ、折っていた制服を戻す。立ち上がった蓮は余ったシップを、虎臣に差し出した。
「学校で貼り代えろ」
「…アンタの施しは受けたくない」
「これくらいで恩に着せる気はないぞ」
「当たり前じゃん!これくらいでっ」
蓮の手から奪うようにシップを受け取った虎臣は、悔しさに唇を噛みしめる。
少しぐらい蓮が自分を責めてくれたら、言い返すのに。八つ当たって、蓮をバカにして、気が晴れたかもしれないのに。この男はいつもと同じように、淡々と虎臣の相手をしている。
とても並び立つことが出来ない。
同じ人を好きな、恋敵のはずなのに。
「言えばいいだろ、迷惑したって!ムカついてるって怒鳴れよっ」
「怒鳴っているのは、お前だ」
「いい気味だとでも思ってんのかよ!オレが千歳さんに嫌われて、ホントは笑ってるくせに!!」
言うや否や、自分の髪を握り締めるように頭を押さえた虎臣は、ぼろぼろと泣き出してしまう。
あんなに怒った千歳は、初めてだ。
まさか叩かれるとは思わなかった。
「オレ…絶対千歳さんに嫌われた…」
「そんなわけないだろ」
「もう許してくれないのかな…オレのこと嫌いになって、いらなくなっちゃうんだ…理子んトコ行けって言われたら、どうしよう…」
南国荘にいられなくなったら、虎臣は理子の所へ行くしかない。言葉もわからないイタリア。しかも母は自分のよく知らない恋人と二人で暮らしている。
どこにも居場所がない。
自分の吐いたつまらない嘘で、こんな大変なことになるなんて。
泣きやまない虎臣が、どんどん勝手に落ち込んでいくのを見下ろして、蓮は溜息を吐いた。
血の繋がらない親子のはずなのに、千歳と虎臣は、なんと似ていることか。いちいち自分で自分が不幸になる理由を探すところなんか、そっくりだ。