【蓮×千歳H】 P:06


 父親の務めだよ。ラジャが悪戯っぽく笑うのに、千歳もようやく微笑んだ。

「はい」
『いい子だ。…さて、レンが帰ってきたようだね』
「え?蓮、あれからどこかへ出かけてたんですか?」
『トラオミと一緒に車で出ていたようだ。送っていったのかな』
「そんな!蓮、全然寝てないのにっ」

 慌てて窓辺に走り寄り、車から出てくる蓮を見た千歳は、すぐに部屋を飛び出そうとする。
 しかし寸前でラジャを振り返った。

「ラジャさん、ありがとうございました」
『構わんよ。早く行ってやりなさい。後はレンに聞いてもらうといい』
「はい。…あの」
『なんだね?』
「また蓮の小さいときの話、聞かせてもらえませんか?それからその…ラジャさんのことも」

 今まではまともに姿を見ることさえ、怖くて出来なかった相手。でも今はもっと、ラジャのことを知りたい。
 躊躇いがちに「良かったら」と付け加えた千歳の前で、ラジャは本当に嬉しそうな笑みを浮かべている。

『キミが聞いてくれるなら、いくらでも』
「ありがとうございます!」

 今まで一度もラジャに見せたことのない、屈託のない顔で笑って、千歳は部屋を出て行った。