思い切って言ってみた千歳のそばに、蓮は胡坐をかいて座る。少し胸をそらすようにして、ベッドカバーの上に手をついた蓮が、じっとしていてくれるのを見て、千歳は躊躇いがちに手を伸ばした。
試しに指先で、胸の上あたりに触れてみる。細いだけの自分とは違う、固く締まった肌に、千歳は今の状況もわきまえず、すぐさま夢中になっていた。
「うわ…固いね。何かしてる?」
「いや」
「ジムか何かで鍛えてるんじゃないの?」
「特には。でもまあ、機材が重いしな。家事も意外と重労働だ」
「そっか…あ、肩とか腕とか、やっぱりすごい」
思わず身を乗り出して、蓮の身体をぺたぺた触っていた千歳は、嬉しそうに顔を上げて急に恥ずかしくなる。
「ご、ごめん」
「謝ることはないさ」
「うん」
「シャツ」
「え?」
「お前も脱げよ。シャツぐらい」
蓮に言われて、千歳はきゅっと自分の胸元を握り締めた。
「でも…僕、貧弱だし…」
「貧弱ってほどでもないだろ。確かに細いとは思うけどな」
「だって食べても太らないんだもん…」
「いいから脱げよ。どうせボタンはもう、外れてるんだから」
「うん…じゃあ」
恥ずかしげにシャツを握り、肩を抜いた千歳の姿を、蓮は目を細めて見つめる。
だんだん指が震えてくるのを堪え、なんとか手首のボタンを外した千歳は、視界の端に蓮のものを捉えてしまい、ぎくしゃくと目をそらせた。
「千歳」
「う、うん。ちょっと待って」
顔をそむけてシャツから腕を抜く。
千歳はぎゅっと目を閉じていた。
まだ何もしていないのに、ただ目の前の千歳がシャツを脱いでいるだけで、蓮のものは少しずつカタチを変えている。
こんな間近に、他人のものを見たことなんかない。
さっきまで触れるのが楽しいだけだった蓮の身体なのに。今は視界の端に映すだけで、息苦しいくらい心臓が脈打っている。
「白いな」
ぼそっと呟かれ、千歳は膝を抱え込んでしまった。
「言わないでよ。気にしてるんだから」
「褒めてるんだよ。お前が仕事で外を駆け回ってるのは、知ってるからな」
「蓮…」
「あんまり焼けないのか?」
「…うん」
「じゃあ、夏場はキツイだろ」
何でもない会話。
ゆっくり顔を上げた千歳は、苦笑いの蓮を見て、ようやく身体の力を抜いた。
「こんな身体…嫌じゃない?」
「そんな心配、する方がおかしいんだよ」
「だって…」
「どんなに俺がお前に惚れてるか。散々聞かせてやったのに、まだ足りないか?」
平然とした蓮の言葉に、千歳の顔が赤くなる。それを隠して少し口を尖らせ、千歳は拗ねた表情を見せた。