「でもさ…蓮は僕と違って、すごいきれいな身体してるんだもん」
「お気に召したようで、良かったよ」
自分の不安に軽い言葉を返されて、千歳はむくれた表情になる。
「…モテたでしょ」
「何が」
「蓮、女の子にめちゃくちゃモテてたんじゃないの」
「まあな」
蓮みたいな整った顔で言われると、傲慢な言葉も大して嫌味に聞こえない。しかし彼は「だとしても」と言葉を継いだ。
「お前以外の人間に好かれたって、俺には意味がないんだよ」
肩を竦めて呟いた。
不安がる千歳の会話に付き合う蓮は、けして自分から手を出そうとはしない。
気遣ってくれる彼の優しさに、千歳は自分が何を怖がっているんだろうと、可笑しくなってきた。
蓮に限って千歳が嫌がるようなことを、するはずがない。蓮を信じなくて誰を信じるというのか。
抱えていた膝を離し、ぺたりと手をついて座り込んだ千歳は、上目遣いに蓮を見つめる。
「あの、ね…僕、本当にどうしていいか、わかんないんだ」
「ああ」
「だから…全部蓮に任せても、いい?」
もうすでに、いっぱいいっぱいなのだかと。潤んだ瞳で見上げられ、蓮は口元に笑みを刷いて頷いた。
「任せろ」
「…うん」
「お前は自分が楽なようにしてればいい」
「わかった」
「思ったことは何でも言え。今も、これからも。必ずなんとかしてやる」
「蓮…」
「ま、すぐに何も考えられなくなると思うけどな」
にやりといやらしく口元を歪めた蓮に、千歳は顔を赤くしながら、頷いていた。