すぐに何も考えられなくなる。
蓮にそう言われたとき、言葉の意味が良くわかっていなかった千歳だが、今なら理解できる。
いや、理解できるというのはおかしいかもしれない。何かを理解するほど、千歳にはもう余裕がないのだから。
「あっ、ぁ…そこッ、あ、あっ、だめ…だって、やだぁ…っ」
自分の甘ったるい声が恥ずかしいとか、蓮の手が熱いとか、考えていられたのは最初だけ。
千歳は蓮に翻弄されて、もう理性も何も飛んでしまっている。
喘ぐ声は止まらないし、シーツを掻く指に力は入らない。与えられる快楽を追うだけで精一杯だ。
「や…ふっ、ぃあッ、そ…こ、ぁっ」
一応、首を振ったりしているが、拒絶している気もなければ、首を振っている自覚さえない。
何かを塗った蓮の長い指が、奥まで挿し入れられていて、その異物感に身が震えるたび、前を強く吸い上げられる。
初めて自分の放ったものを嚥下されたときは、さすがに恥ずかしくて涙を零したけど。それも二度目、三度目となればもう、気持ち良さで意識が鈍り、恥ずかしいなんて考える余裕もない。千歳は蓮の熱い舌先を感じているだけで必死だった。
蓮が千歳の足を撫でながら、三本目の指を入れる。
「やああっ!やだあ…っ」
何かがせり上がってくるような、とてつもない圧迫感。でも千歳が嫌がると、蓮はまた前に強烈な快感を与えて、千歳を翻弄してしまう。
「あ、あっ…あ、れん…や、ぁ」
腰を浮かせている自覚もないのだろう、千歳がきゅうっと身体を強張らせ、一気に弛緩した。ゆっくり身を起こした蓮は、手の中に受け止めてやったものを、千歳の胸に塗りつける。
「千歳…手を出せ」
蓮の言葉に、千歳はゆるく首を振る。それが嫌がっているわけじゃなく、もう手を持ち上げる気力もないのだとわかって、蓮は苦笑いを浮かべた。
千歳の横に手をつき、ぐったりした身体を見下ろす。吸われたり噛みつかれたりした痕のわかる細く白い肢体に、艶めかしい色気を感じて、蓮は息を吐いた。
「千歳?」
呼びかけると、千歳はまぶたを上げて蓮を見るけど。どうにも焦点が定まらない。
「…手」
だらりと伸びた千歳の手を取り、蓮はもう熱く猛っている自分のものを握らせた。
「わかるか?俺の」
「れ、ん…れん、の?」
「ああ。悪いがもう、限界だ」
「ん…れんの、すご…あつ、い」
ぼうっとしながら、握らされているものを確かめていた千歳は、やんわりとした笑みを浮かべる。
笑みを返してくれた蓮の優しい瞳。それを見ていると、急に泣きたくなってしまって。同時に千歳は、いま自分が何を触っているか自覚した。