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【蓮×千歳⑫】 P:11


 でもその後に決まった、蓮との同居や、急な引越しに時間を取られ、イタリアへ旅立つ理子とは話し合う時間が取れなかったから。
 それすらも計算のうちだったと言われた千歳は、驚きを隠せない。

『葛くんと相談して、千歳の引越しを決めたのよ。どうせ千歳はいつまでも悩んでるだろうから、いっそ一緒に住んで口説けばいいのよって、私がね』
「そ、そんな勝手な…」
『トラがきっと反対するって話したら、葛くんが一緒に預かっても構わないって言ってくれて。丁度いいと思ったの。あの子はいつまでも親離れ出来ない性格だし、私も子離れ出来てなかったし。…何度も会って相談したのよ。聞いてないの?』
「…聞いてない」
『そう。じゃあ葛家の人は、みんな信用出来る方なのね。私が千歳には黙っていて欲しいって言ったから、ちゃんと秘密を守ってくれたんだ』
「そ、そんな…じゃあもしかして、みんな知ってたったこと?」

 千歳が引っ越してきたとき、榕子たちはすでに、自分たち家族の事情や、もしかしたら蓮への想いまで、知っていたのだろうか。
 呆然とした顔で振り返ると、ダイニングテーブルに集まった葛家の人々が、虎臣に何かを話している。おそらくは千歳が今聞いている、引越しの経緯だ。ちらりとこちらを見た虎臣は、呆れた顔で肩を竦めていた。

『私の大切な千歳とトラを預かってもらうんだから、適当なことするはずないでしょ。ちゃんとそちらへ伺って、榕子さんや伶志君たちにご挨拶したし、トラの学校へも葛くんに連れて行ってもらったわ』
「…………」
『確か南国荘っていうのよね。緑に囲まれた素敵なお屋敷。あんなところに住めるなんて、千歳とトラがちょっと羨ましかったな』
「…………」
『ねえ、聞いてる?』
「聞いてる」
『来月に一度戻るから、遊びに行くわね。葛くんにもよろしく伝えておいて。写真ありがとうって』
「何の写真?!」

 知らないことばかり聞かされ、焦る千歳に理子の笑う声が聞こえる。

『色々よ、トラとか千歳とか。楽しく暮らしてるのがわかるような写真ばかり。詳しいことは葛くんに直接聞いてちょうだい。もう切るわね』
「待ってよ、理子さん!」
『おめでとう、千歳。幸せになってくれて嬉しい。離婚のこと、考えておいて』
「しないってば!」

 叫んだ千歳の言葉を最後まで聞かず、電話は切れてしまった。
 呆然と電話を見つめていた千歳は、それを置いて足早に蓮に詰め寄る。

「どういうこと!」
「…落ち着け」
「落ち着いてらんないでしょ!全部知ってたって何!僕が知らないところで、蓮と理子さんは何度も会ってたのっ?!」
「…向こうから連絡してきたんだ」