すらっとした体つきに、整った顔。目元を見ると少し気が強そうだけど、あどけなさが残っていて、まるで子犬みたい。可愛いな。
「ボクは六浦ミルティアディス咲良。キミもココに住ンデるの?」
「はい。東 千歳の息子で、虎臣(トラオミ)といいます」
まるで珍しいものでも見るように、ボクをまじまじ見て。でも目が合うと、にこりと笑った。
「わかった、蓮さんの知り合いと、千歳さんの会社の人。ですよね?」
「あ…二宮蒼紀です。その、もう会社の人じゃないけど…」
「そうなんだ?まあ、とにかくよろしくお願いします」
「ヨロシクね、トラオミ」
ボクがそう言うと、彼はちょっとびっくりした顔になった。
「ボクのニホンゴ、やっぱりオカシイ?」
「ごめんなさい、そうじゃないんです。なんて言うか…ホントに海外の人って、すぐ名前で呼ぶんだなあと思ったから」
「ダメ?トラオミってヨブの」
「いいですよ、全然気にしてないです。苗字は千歳さんと一緒だから、ややこしいしと思うし」
「キミ、ホントにチトセの息子ナノ?チトセかなりワカイよね」
「ん〜色々と、事情があって。でもちゃんと息子ですよ」
なんだか他人行儀な話し方。これから一緒に暮らすのに、寂しいな。
「…トラオミ」
「はい?」
「ボク、もっとナカヨクしたい」
ボクの言葉の意味が、すぐには理解できなかったんだろう。トラオミは戸惑う表情でボクを見てる。わかりにくかったかな。
「エト…『気にシテないデス、ちゃんと息子デス』トラオミの話し方、きれいなニホンゴ。デモきっとパパやレンには、チガウ話し方するヨネ?」
「ああ、言葉遣いのこと?」
「ソウそれ、コトバヅカイ」
ボクが頷くと、トラオミはくすっと表情を柔らかくして笑った。
「マジで?いいの?」
「マジデ。イイヨ」
「あはは!面白いね、六浦さん」
「咲良ってヨンデよ」
「うん、じゃあ咲良さん。良かった〜、家で敬語使うの、めんどくさいなって思ってたんだ。オレこの家で一番、年下だから」
「ソウナノ?」
「そうだよ。えーっと…二宮さんは?言葉遣いとか、気になる方ですか?」
「いえあの…一緒で大丈夫だから…」
「ありがと。じゃあ行こうよ、下。みんな待ってるよ」
ボクとアオキを案内するように、ゆったりした歩調で階段を下りながら「ちょっと寄り道する?」と聞いて、トラオミはランドリーやリネン室の場所を教えてくれた。
中庭の右手に見えた部屋が、レンの自室と仕事部屋なんだって。
……どんな部屋なんだろう。
階段の反対側から回って、一度裏庭に出てから、直接キッチンに入る。そんなところから現れるとは思っていなかったんだろう。キッチンに立っていたレンが、ボクたち三人を見て驚いていた。