お互いにリラックスして、お互いを信頼できているの、見ていればがわかるよ。年が近いから親子と言うより、兄弟みたいにも見えるけどね。
きっとチトセや彼のママが、とても素敵な人なんだろう。
にこにこしてみんなの話を聞いていたヨウコさんが、ふいに視線を上げた。チトセも同じ場所を見てる。
なんだろう?階段を上っていたときと同じだ。何も無い場所なのに。
「ラ、ラジャさんっ!」
「あらあら〜…そうなの」
「もういいですって、そのことは」
慌てた様子でチトセが声を上げた。ボクは首を傾げてしまう。
まただ。ラジャって何?誰かの名前?
「やっぱりギリシャ人でも無理か〜」
くすくす笑ってるレイシとトラオミ。どういうこと?
「二宮さんは?見える?」
「あの…何をですか?」
「榕子さんや千歳さんが話してる相手。残念ながら、オレには見えないんだけど」
「いえ、ぼくにも…すいません」
申し訳なさそうに箸を置いた。そういえばアオキ、あんまり食べてない。もったいないな。レンの料理、美味しいのに。嫌いなものがあるのかな?
よく話の掴めないボクらに、レイシはニヤニヤ笑いながら、何も無い空中を指差した。
「あの辺にね、ラジャさんっていう、榕子さんの大事な人が浮いてんの」
「えええ?!プネヴマ?!」
「は?…なに?」
「え、エト、死んだヒト?!」
「ああ、違う違う。妖精とか精霊とか、わかる?フェアリーって言ったほうがわかるのかな」
混乱しながらレイシの言葉を聞いて、ようやく理解した。
「ニュンペー!スゴイ。ココにイルの?」
「詳しいことは聞かないでよ?ボクだって見えないんだから。とにかく南国荘にはそういう人たちがいてね。ほとんどは庭にいるんだけど、あのラジャさんは別格だから、姿の見える榕子さんや千歳さんは、話すことも出来るんだ。彼らもボクらと一緒、南国荘の住人」
「なんてステキなイエなんだろう…」
呆然として呟きながら、ヨウコさんやチトセの話している方を見つめる。
一生懸命目を凝らすけど、やっぱりボクには見えなかった。残念だな……見えたらすぐにでも、友達になりたいのに。
神話の中でしか知らない存在が、同じ家で暮らしているなんて、見えたほうが絶対楽しいよね。
「…大丈夫だよ、二宮さん」
トラオミがそっと話しかけている。ボクもアオキの方を見た。
可哀想なくらい真っ青になって、少し震えているみたいだ。そんなアオキのこと一番最初に気付くなんて、トラオミは優しい子なんだね。
「何も怖くなんかない。どうせオレらには見えないんだし、怖がるような存在じゃないって、榕子さんや千歳さんを見てれば、わかるよね」
「虎臣くん…」
小さく頷いたアオキだけど、彼はかなりのショックを受けているみたい。