ボクはそういう見えない存在に、興味も好意もあるけど。もちろん苦手な人だっているだろう。
何かしてあげたくて、隣にいるアオキをぎゅっと抱きしめてあげた。
「ダイジョーブ、ダイジョーブ。ナニモ怖くナイヨ」
「っ!や、やめっ」
びくっと大きく震えたアオキの身体。そんなに怖かったのかと、顔を覗き込もうとしたボクは、いつのまに後ろへ回ってきたのか、レンに身体を引き離されてしまう。
「どこまで節操がないんだ、お前は」
「レ、レン?」
どうしてそんな、怒った顔をしてるの。
でもレンは溜息を吐いて、アオキを見下ろした。
「二宮、ケガは大丈夫か?」
「あ、いえ…大丈夫、です」
アオキは小さな声で答えてる。
それより今レン、怪我って言った?
「二宮さん、ケガしてんの?」
驚いた様子でボクと同じ疑問を口にしたトラオミに、レンが頷いてる。
「肩を痛めているそうだ。かなり酷い状態らしい。それで千歳がここへ、連れて来たんだよ」
「ああ、それでかあ。千歳さんが急に二宮さん連れて帰ってきたの、何でかな〜って思ってたんだ。肩のケガだったら、日常生活にも困るよね」
「そういうことだ、咲良。気をつけろ」
厳しい声で言われ、素直に頷いた。
知らなかったとはいえ、ボクはかなり強くアオキを抱きしめてしまったから。
「ゴメンね、アオキ…痛カッタ?」
「大丈夫です、本当に…すいません」
身を小さくして下を向いているアオキ。なんだか自分が、とても悪いことをしたみたいに。
アオキにとってスイマセンは、アリガトウと同じなんだと思ってたけど。そればかりじゃないってこと?
口を開こうとしたボクを遮って、ヨウコさんが見えない誰かと話し出す。相手はさっき聞いたラジャかな?
「ラジャはどう思うの?…そう。せっかく来てくれたのに、さくらちゃん、もうここがイヤになっちゃうかしら?」
急にボクの名前を挙げるから、なんだろうと思って、首を傾げる。そうしたら困った顔のヨウコさんが、顔を赤くしたチトセとボクを交互に見ていた。
「ヨウコさん?」
「あのねえ、さくらちゃん。いまラジャに聞いたんだけど、蓮ちゃんを愛しているって言ったの、本当?」
「えええっっ?!」
レイシとトラオミが目をまん丸にして声を上げた。そんなに驚くこと?レンはこんなにも魅力的なんだから、当然だと思うけど。
そうかあの時、ラジャはどこかにいて、ボクらの話を聞いていたんだね。
「ホントウだよ。ボクはレンをアイシテいるし、レンに会いタカッタのは、リュウガク決めたリユウのひとつ」
「あらあら…そんなに?会ったのはこの間、陣さんと一緒にご飯を食べに行ったときが初めてでしょう?」
「うん。でもボクはレンを知ってたヨ。ジンの話やシャシンの中ダケドね」