「ダイジョーブ?」
「ちょっ!何してんの咲良さん!!」
「?…だってアオキ、ナイテるから」
「いや、だからってその行動、意味わかんないでしょっ」
虎臣くんが慌てて咲良さんを引き離そうとしてくれていたとき、ドアが開いて東さんが姿を現した。
「病人の前でなに騒いでるの君たちは!!」
大きな声で叱られ、虎臣くんと咲良さんは顔を見合わせる。
「だって咲良さんが…」
「ボク、ナニモ悪いコトしてナイヨ?」
「いや悪気がなくてもさあ」
「心配性ダネ、トラオミは」
「それ、おかしくない?心配性っていうか、誰だってあの場合…」
「揉めるなら外でやりなさいっ」
怒った東さんに追い立てられ、虎臣くんと咲良さんは、仕方なさそうに部屋を出て行った。
呆れ顔で二人を見送った東さんは振り返ると、困った顔になっていて。口元に優しい笑みを浮かべながら、ぼくを見下ろしていた。
「…聞いたよ。仕事、探しに行ったんだってね?」
「すいま、せ…っ」
「謝らなくてもいいから…泣かないで?もう大丈夫だよ。…君は、帰ってきたんだから。ケガしてるのに一人で繁華街へ行くなんて、大変だったでしょ。もう大丈夫だよ」
「あ、ずまさっ…ぼくっ」
「うん…わかってる。仕事を始められないこと、そんなに気にしてたんだね…気付いてあげられなくて、ごめんね」
ゆっくりベッドに腰掛け、東さんは優しくぼくの頭を撫でていてくれる。
冷たい手だ。きっと帰ってきたばかりなんだろう。東さんは寒い外から戻って、身体を温めるより先に、ぼくの所へ来てくれた。
……ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
あなたのくれる思いやりに、何も返せないぼくを、許してください。
嗚咽で声が出せなくて、泣き止むことさえ出来なくて。でも東さんは穏やかな笑みを浮かべたまま、何度も「大丈夫だよ」と繰り返していてくれた。
しばらくの間、東さんはぼくのそばにいてくれた。
不意に立ち上がって、虎臣くんが絞ってくれていたタオルを取ると、ぼくの額にゆっくりおいてくれる。
熱っぽい身体に、気持ちいい。
「ねえ二宮くん」
もう一度ベッドに腰掛けた東さんは、少し考えるような表情になって、ぼくを見つめていた。
「仕事、一緒に探そうか」
「え?」
「ケガで動けない今なら、色んなことを考えられるでしょ?もし資格が必要だったら、動けない今はチャンスだよ。だから、一緒に探してみよう。君の一生懸命な性格を、活かせるような仕事。」