【南国荘U-G】 P:02


 あの頃の僕に、理子(リコ)さんや虎臣くんがいなかったら、どんなに辛かっただろう。
 二宮くんも気付いてくれるかな。
今の彼は一人じゃないってこと。
 自分のことを自分で考えるのは、大事なことだ。でも一人じゃ、見つけられないこともあるから。

二宮くんは一人じゃない。僕と二人で見つからなかったら、蓮(レン)たちにも相談してみよう。自分じゃ気付けない答えが、見つかるかもしれないよ。…一緒に考えようね」
「東さん…」
「だから今は、とにかく休んで。
熱が下がってから、もう一度話をしよう。いいね?」
「…はい」
「うん。じゃあ目を閉じて…ちゃんと寝ていなさい」

 そっと二宮くんの目の上に手を置いて、彼が眠るまでそばにいる。
 寝息が落ち着いたのを確認し、僕は彼の額に置いたタオルを、冷たく絞り直してもう一度額に置くと、部屋を出た。

 二宮くんの性格を活かせる仕事、なんて。彼を慰めたいあまり言ってしまったけど……どうなんだろう?
 彼の真面目で一途な性格は知っているつもり。確かに慣れるまで時間がかるけど、そのぶん与えられた仕事は、確実にこなしていく子なんだ。
 出版社のような、
慌しい環境には上手く馴染めなかったみたいだね。でももっと、ゆっくりした職場なら、彼の良さを活かせるかな。
 ……ただ。それだけで仕事を探すのは、本当に良いことなんだろうか。
 どんなに慣れるまで時間がかかったって、彼自身がやりたいと思わなきゃ、意味がないようにも思う。

 東京へ出てきて、何がしたかったのかと聞いた僕に、答えられなかった二宮くん。
 だけどもう少し自信を持ってくれたら、違うことが見えてくると思うんだ。
 フライングになっちゃうけど、蓮に相談してみようかな。蓮から見た二宮くんは、どんな青年なのか聞いてみたい。

 階段を下まで降りて、リビングに入る。
 そこでは不在の時間を埋めるかのように、咲良くんが蓮に抱きついていて。僕の存在に気付いた虎くんが、咄嗟に咲良くんを引き離していた。

「もういいでしょ?蓮さん動けないじゃん」
「トラオミ…ズルい」
「なんだよそれ、オレが千歳さんの味方なのは仕方ないって言ったくせに」
「言ったケド、ボクだってトラオミにミカタしてホシイ」
「両方は無理!」

 拗ねた様子の咲良くんと、僕を気遣ってくれている虎くん。
 悪いなって思ってる。虎くんにこんなことで、心配かけちゃいけないよね。

「千歳(チトセ)、メシは?」
「ん…済ませてきた」

 嘘だけど。ごめんね、蓮。
 どんなに美味しくても、
今の僕は蓮の食事を、美味しく食べられそうにない。
 
 じっと見つめる蓮の視線。彼は本当に勘のいい人だから、僕の嘘なんかお見通しなんだと思う。でもそれを許してくれる蓮の優しさに、僕は甘えてる。