【南国荘U-G】 P:10


「でも蓮は咲良くんを気に入ってるじゃないかっ」
「………」
「咲良くんが本当はいい子だって、気付いてるんでしょ?明るくて楽しい子だけど、それだけじゃないこと。本当に優しくて、人の心に敏感な子だって思ってるよね!僕が気付けたこと、蓮が気付かないわけないっ」
「千歳」
「蓮は…れん、は…咲良くんが、好き…?」

 まくし立てるように言う僕は、自分の言葉に傷ついていた。
 そんなことを確かめて、どうするつもりなんだろう。本当に好きだといわれたら、辛くなるだけなのに。
 蓮は不機嫌そうに眉を寄せて、僕の顔を見つめていた。

「悪い奴じゃないとは思ってる」
「蓮…」
「喧しいとも鬱陶しいとも思ってるが、あいつはちゃんと周囲を見られる奴だ。だから虎臣も懐いてるんだろ。…それで?お前はどうなんだよ」

 逆に尋ねられて、僕は何度か涙で濡れた目をしばたかせた。

「ぼ、く?」
「ああ。俺にはお前が俺以上に、咲良を気に入っているとしか思えない」
「それは…だって」
「最近のお前は何かと咲良、咲良だ。いい加減不安を覚えるのは、俺の方だぞ。…あいつが好きなのか?」

 蓮の言葉と、拗ねた表情に驚いて、僕は首を振った。

「そんなこと!」
「あるわけない、だろ」
「そうだよっ!
僕が咲良くんをなんて、そんなことあるわけないじゃないかっ」
「矛盾してるよな、千歳。自分は信じて欲しいのに、
俺のことは信じられないのか?

 どうなんだって、蓮は不機嫌そうに言いながら、僕の唇を指先でたどる。
 怒ってる表情でじいっと見つめるから、僕は何度も首を振って。そうしたら蓮が、優しく笑ってくれた。

「わかってるさ」
「…うん」
「俺にはお前だけだ」
「うん」
「俺が愛しているのは、過去現在未来を通して、永遠に千歳だけだ」
「うん…うん。ごめんなさい…」

 ぎゅうっと蓮に抱きついた。
 本当に、咲良くんはいい子で。彼が幸せになってくれたらいいって、僕は思ってて。でもそれは、僕と蓮の未来を書き換えることになってしまうから。
 自分を悪者にしたくなかったのかな。
 咲良くんの幸せを奪う人間に、なりたくなかったから、悲しいことばかり考えたのかもしれない。
 怖かったのも、不安だったのも、僕が弱いせいだ。

 ただ蓮を信じてるって、呪文のように繰り返しているだけじゃダメだ。蓮を信じてるのは本当だけど、根拠もなく繰り返していたって、何の力もない。
 必要なのは、僕が強くなること。
 もっと自分の気持ちに、自信を持つことなんだろう。
 咲良くんのように、言葉で表現することは出来ないけど。蓮を思う気持ちは、絶対に負けない。
 誰より僕が世界で一番、蓮を愛してる。
 それだけは、誰にも譲れない。
 ……だから僕は、僕自身を信じるように、蓮の気持ちを信じたい。