どうしてこんなにも二宮さんは、自分に自信が持てないんだろう。ほんと、たくさんすごいこと出来るのに。
千歳さんと同じ出版社でバイトしてた頃、原稿を守ろうとして、今のケガをしたんだって聞いたよ。南国荘に来てからも、蓮さんが忙しくて手が回らなかったこと、一番最初に気がついて、無意識にさらっと片付けてる。
それなのに本人は、やってしまったって気付いた後、めちゃくちゃ後悔してるんだ。
今オレがお茶飲みたいと思ってたのも、ちゃんと気付いてくれた。
二宮さんが淹れてくれるお茶は、いつも美味しい。
学校から帰ってきたら、おかえりって声を掛けてくれる。
それぞれは小さなことかもしれなくて、二宮さんは誰にでも出来ることって、思ってるみたい。でもさ、オレはそんな二宮さんを、すごい人だと思ってるんだけどな。
「…ねえ、二宮さん」
「なに?」
オレの前にお茶を置いて、オレの話を聞くために自分も座って。
首を傾げる二宮さんは、とても可愛い人。
もっと笑顔が増えればいいのにね。
「家事、好き?」
「え?」
「すごい手際いいしさ。料理上手だし。洗濯物なんて、蓮さんより畳むの早いじゃん」
「そんなことないよ」
照れて下を向くと、長い前髪が顔を隠してしまう。ちょっともったいない。
「母が忙しい人だったし、彼女が再婚した後も、家族はみんな忙しかったから。仕方なくぼくがやってただけで」
「イヤだったの?」
「あ…イヤじゃなかったけど…ぼくにはそれしか出来ないっていうか」
そうかな?それって他の事をしようにも、家事に追われていて、時間を取れなかっただけなんじゃない?
オレ、南国荘に来て初めて思ったんだけど、家事って大変なんだよな。とくに仕事しながら家事すんのって。蓮さんのこと、すごいと思ってる。
「でも家事って大変じゃん。オレはさ、昔っから理子(リコ)…母さんと千歳さんに全部任せっきりで、何もしなかったんだ。でも今になって、もっと手伝えば良かったなって思う」
きっと二人とも大変だった。
オレも二宮さんと同じ。忙しい家族の中、自分だけはヒマな学生だったんだから。手伝う時間くらいあったはずなのに、何もしようとしなかった。
それにね。もう少し経験値があったら今、蓮さんや二宮さんのこと、ちゃんと手伝えると思うんだよね。
「虎臣くんは…優しいんだね」
「そうかな?普通だよ」
「優しいよ」
ほら、ね。こうして人を率直に褒められることだって、オレは二宮さんの才能だと思うんだよ。
だからもっと、笑って欲しいんだ。
オレ、二宮さんの笑った顔、見たいな。
「…二宮さん、もう少し前髪、切ればいいのに」
「前髪…?」
「うん。それだけ長いと、下向いたら顔が隠れるじゃん。印象も暗くなっちゃうし」
「………」
「もう少し切ったら、明るい感じになるんじゃないかな」
何気ない提案だったんだけど。二宮さんはすうっと青くなって、ふいっとオレから顔を背けてしまった。