コンプレックスって、誰にでもあるよね。
他人から見たら長所でも、本人には短所かもしれない。そういうの指摘されたら、どんな言葉でも嫌な気持ちになるに決まってる。
謝ったらもっと傷つける?黙ってた方がいい?どっちを選択しても二宮さんに許してもらえないんだったら、謝りたい。これって自己満足なのかな。
南国荘で二宮さんと一番喋ってるのって、オレだと思うんだ。そのせいか、最近の二宮さんは何かで迷ったとき、救いを求めるような顔で、オレを見てくれるようになった。
中学生に言われたくないだろうけど、そういう表情がなんだか幼く見えて、すごく可愛いんだよね。頼られてる感じが嬉しい。
嫌われたくないな……謝りに行こうかな。
でも二宮さんは、本当に些細なことで傷ついて、自分を責めるから。オレが謝って、また二宮さんを後悔させるなら、言わない方がいいんだよね。
どうしよう……答えを決められない。
二宮さん、傷ついた顔してたよね。
傷つけたのは、オレなんだ。
謝ってしまうのは短絡的?だったらどうするのが、二宮さんの救いになるんだろう。
自分の顔が嫌いだって言ってた。オレみたいじゃないからって。
そうかな……オレは自分の顔、そんなに好きじゃないよ。カッコいいっていうのは、蓮さんみたいな人とか、咲良さんみたいな人だと思う。
それに千歳さんみたいな優しい顔とか、二宮さんみたいな可愛い顔だって、人を惹きつけるんじゃないかな。
顔だけだったらオレは、蓮さんや咲良さんみたいな男っぽい顔より、二宮さんが時々笑うときの、可愛い表情の方が好きだし。
堂々巡りの思考に嫌気が差して、オレはイヤホンを外し、部屋を出た。
隣が二宮さんの部屋。
どうしようか、すごく迷ったんだけど。謝る言葉が思い浮かばない。
あーもう……なんであんなこと言っちゃったんだろう。情けない自分に、溜め息しか出てこない。
しばらく立ち止まっていたオレは、結局どうすることも出来なくて。反対方向に歩き出し、階段を下りた。
「まだ起きてたのか」
急に声を掛けられて、冷蔵庫の前にいたオレは後ろを振り返った。
「蓮さん」
蓮さんは裏庭からの勝手口に立って、オレを見ていた。
スーパーの袋を手にしてる。こんな時間に買い物?
「まだ12時過ぎじゃん」
「明日、起きられるのか?」
「大丈夫だよ。それより、そっちこそ。こんな時間に買い物?」
「ああ」
「千歳さんは?」
「俺の部屋で寝てる」
さらっと言われたけど……それってさ。
まあ、いいか。恋人同士なんだし、いまさらだよね。
キッチンのカウンターに置いてあるイスに腰掛けて、黙々と作業を始めた蓮さんのことを見つめる。
買って来たのは豆腐とひじき。まさかまた豆腐ハンバーグ?先週出たじゃん……嫌いじゃないけど、どうせなら肉のハンバーグ食いたい。
でも、口には出さないよ。食事に関しては、何を言ったって聞いてもらえないの、南国荘に来てから経験済み。