血の繋がったの親子じゃないって言ってたのに、トラオミと似ているような気がする。
「咲良くんが、そんな風だから。僕はきっと不安だったんだろうな」
「ソンナフウ?」
「優しくて、明るくて。どんなときも、人を嫌な気持ちにさせたりしないから。蓮が君を好きになっても仕方ないって、そうなったら僕では敵わないんだって。ずっと思ってた」
チトセの零す言葉は、ボクじゃなくてチトセにこそ、相応しいように思う。
だけどこうして、誰かのいいところをすぐに見つけられるチトセだから。レンは彼を愛しているんだろう。
自分がチトセに劣っているなんて思わないよ。でもレンに相応しいのはきっと、誰でもなくチトセなんだね。
「レンがアイシてるのは、永遠にチトセだけなんだカラ。ソンナフウに考えなくてもイインダヨ」
「咲良くん」
「ナガサキの話、タクサン聞かせてネ。いつかボクも行きタイ」
「わかった。蓮には建物の写真、たくさん撮るように言っておくよ」
「ウレシイな」
人と笑い合って話が出来るのは、幸せなことだよね。これからはもっとたくさん、チトセとも話をしたいな。同じ人を好きなったんだから、色んな共感をもって、話が出来ると思うんだ。
ボクたちの会話を嬉しそうな顔で聞いていたトラオミが、箸を置いて身を乗り出した。
「じゃあさ、オレらもどっか遊びに行く?もし咲良さんに週末の予定がないんだったら」
「ホント?じゃあヨコハマ行きタイ!」
すぐに答えたボクの顔、ぽかんとした表情で見つめたトラオミは、苦笑いを浮かべる。
「アンタはホントにもう…どんなけ前向きなんだよ」
「マエムキ、いい言葉デショ?」
「まあ、そうだけど。じゃあ横浜ね。土曜でも平気?」
「イツデモ、ヘーキ」
「だったら虎くん、僕の本棚に横浜のガイドブックあるから、咲良くんと一緒に見てみたら?」
「机の隣にある本棚だよね。勝手に出してもいいの?」
「もちろん。じゃあ僕は、そろそろ行かないと」
「あ、オレも」
二人が立ち上がる。同じタイミングで、アオキが朝ご飯を用意してくれた。
「榕子さん、月曜までお願いします」
「はあい、気をつけて行ってらっしゃい。トラちゃんもお勉強、頑張ってね」
「無理だけはしちゃダメだよ、二宮くん」
「はい。お気をつけて」
最後にチトセはボクを見て、微笑んだ。
「行ってきます」
「イッテラッシャイ、チトセ!」
手を振るボクに、チトセも手を振り返して歩き出した。
レンとチトセが二人で過ごす長崎での時間を考えると、さすがにまだ少し、胸が痛いけど。ボクは頭を切り替える。
トラオミと一緒の横浜だって、楽しいに違いないんだから。