「咲良さん…それ、極論じゃない?」
「ジャア、遊ぶコトの方がダイジ」
「一緒じゃん」
自分の考えが間違ってるとは思わない。でもこういう言い方じゃ、日本人の、いやアオキの心は納得できないのかな。
「ワカッタ。だったら言い方カエル。ボクはアオキとトラオミとイッショに、ヨコハマ行きたい。どーしてもダメ?」
「あの…でも、咲良さん」
「イコウヨ」
「え…っとあの」
「イコウネ、アオキ」
ダメ押しとばかりに笑いかける。返事に窮したアオキは、助けを求めるようにトラオミを見つめた。
「虎臣くん…」
「ごめん、オレも二宮さんと一緒に行きたいんだ。ちゃんと家のこと手伝うよ。ケガがまだ辛いって言うなら別だけど、大丈夫なんだよね?」
「それは…まあ」
「行こうよ、二宮さん。お願い」
トラオミから素直にお願いって言われて、断れる人間はあんまり、いないんじゃないかな。
アオキも同じ。仕方ないって感じだったけど、頷いてくれた。
「…わかりました」
「ありがと」
「OK!ジャア三人でヨコハマ!ヨカッタねトラオミっ」
ぎゅっと抱きしめたトラオミは、ボクの顔を見て微笑むと、ありがとうって呟いた。
最近ハグに慣れてきたトラオミ。怯えることも逃げ出すこともなくなった。
でもこうして抱きしめるボクの気持ちは、変わってきているんだけどね。
喜ぶ顔が見たい、という気持ちは、何かの始まりなんだと思ってる。
自分のしたことで喜んでくれたとき、相手を抱きしめてしまいたいと思うのは、何かが恋に変わる前兆だろう。
だけどその恋には、色んな種類があるって。そう考えるボクは、珍しいのかな。
色んな種類があるから、自分の中で同時に始まってしまうこともあって。ギリシャにいた頃は、色んな恋人と色んな恋をしていた。
咲良は最低な男だね、って。ギリシャにいたころ何度か言われたんだ。でもみんなそう言いながらも、笑ってくれるから。
レンに感じた運命のように、激しい恋も楽しいね。
でも指先を触れ合わせるだけで、互いに自然と笑みが零れるような、優しい恋も楽しいよ。
どんな恋でもそれが幕を開けるまで、段階があるんじゃないかって思う。
夢に描くだけ。想いを抱えるだけ。触れたいと思うだけ。そしていつかレンとチトセのように、一生を誓うまで。
隣にいてあげたい、と感じるのは、どれくらいの段階だろう。それは経験でしか計れないこと。