やけに自信がありそうな、咲良さんの言葉。オレは思わず、きょとんと首を傾げてしまった。
「なんで?だって二宮さん、お兄さんには逆らえないって言ってたよ」
「アオキがヒロナリに逆らえないなら、ナンゴクソウのみんな、トラオミに逆らえない」
「は?…オレ?!」
びっくりしたオレが自分を指さして尋ねると、咲良さんは力強く頷きながら、にやりと口元を吊り上げた。
「ソウダヨ。トラオミが可愛くオネガイして、ダメっていうヒトいないデショ。明日はレンもチトセも帰ってクル。ヨウコさんはもうスグ。もちろんボクもいる。みんなトラオミの味方ダヨ」
「や、あの…でもさ」
「トラオミはアオキに帰ってほしくナイ。だったらアオキを帰さないでって、みんなにオネガイするとイイ。みんな協力してクレルから。ヒロナリ一人じゃ敵わナイ」
「咲良さん…オレに甘すぎ」
「ソウダネ、超甘い。イヤ?」
面白がってるみたいな言葉。
オレは笑いながら、咲良さんの身体をぎゅって抱き返した。
「イヤじゃない」
「OK、それでイコウ」
「でもさ〜。オレ、可愛くオネガイとか、してる?」
「してるヨ!オネガイするトラオミは、すごくカワイイ。キスしたくなるくらい」
「それはダメ!」
慌てて咲良さんの腕を抜け出した。
もう…ほんとにこの人は、どこまで本気なんだか。
うっかりしてたら、また勝手にキスしてきそうだ。
「え〜…ザンネン」
「残念じゃないっ」
ちょっと気持ちが軽くなる。咲良さんはすごいな。もし千歳さんがいなかったら、蓮さんだってきっと、咲良さんを好きになったよね。
……いろいろ想像できないけど。
オレと咲良さんがじゃれてたら、榕子さんが帰って来た。お酒を飲んではいるけど、酔ってはいないみたい。
二人で浩成さんのこと、二宮さんのことを説明する。
榕子さんは「あらあら〜」って。いつも通りのんきに笑ってたけど、オレが二宮さんのこと渡さないで欲しいってお願いしたら、咲良さんの言うとおり「いいわよ〜」って。
大丈夫だから安心してって、ほんとのお母さんみたいに、頭を撫でてくれたんだ。