【南国荘U-K】 P:07


 誰かのために何かするのって、難しい。
 どうしたら喜んでくれるのか、たくさん考えなくちゃいけない。
 でもその苦労をしてくれた人が、ありがとうって言葉で報われるんだとしたら、恥ずかしくても照れくさくても、言わなきゃいけないよね。

 今のオレは、ちゃんと出来ているかな。
 蓮さんや二宮さんに、感謝してるけど。ちゃんとそれを、伝えられているんだろうか。
 二宮さんはすぐに「ごめん」って言ってしまう。蓮さんたちにも「すいません」って。
 でも前に、ありがとうって言ってくれた時の二宮さんは、すごく幸せそうで。ドキドキするくらい可愛かった。

 あの時本当に、何でもしてあげたいって思ったんだよ。
 あんな風に感謝してくれるなら、オレは二宮さんにもっと、何かをしてあげたい。
 だからオレも二宮さんのしてくれることに、ちゃんと嬉しいって伝えなきゃ。二宮さんは、何も出来なくなんかないんだから。

 明日、蓮さんたちが帰ってきたら、二宮さんに一緒にいられて嬉しいこと、言ってみよう。
 それでも二宮さんがお兄さんと帰るって言うなら、咲良さんが言うように、お願いしてみるのもアリかも。
 オレの頼み方が可愛いかどうかは、知らないけどねって、我ながら苦笑いが浮かんだとき。
 寝返りを打ったオレは、その小さな音に気付いた。

 首を傾げて、身を起こす。
 音ともいえないような、小さな気配。
 でも絶対、間違えてない。
 枕元の電気をつけた。それでもわからなくて、部屋の明かりをつけにいく。
 何だろう……何の音?

 正体が掴めず、眉を寄せたオレの視界。何かが横切った。
 確かあっちへ……と目を遣る。壁際に葉っぱが何枚か落ちてる。
 ベンジャミンの葉だ。千歳さんが部屋の隅に置いてる、腰くらいまで高さのある観葉植物。でも鉢は部屋の反対側なのに?
 鉢のある方を振り返った。
 オレの見ている前で、ベンジャミンの葉が不自然に一枚、木を離れて、ふらふらと部屋を横切っていく。
 何……なんで?
 戸惑っている間に、同じことがもう一度。
 葉っぱは明らかに何かの力で動いてる。それは同じ壁を叩くようにぶつかって、同じ場所に落ちていく。
 オレは部屋を飛び出していた。

 ラジャさんは、誰にも触れることが出来ない。
 でも木とか、水とか、自然のものには触れるんだ。花を揺らして見せてもらったこともある。
 葉っぱが当たっていたのは、二宮さんの部屋に接している壁。
 何かあったんだ。
 ラジャさんが教えてる。

 迷いもなく隣の部屋の扉を叩く。普段二宮さんは鍵なんか掛けないのに、ドアノブを回すと施錠されてる。

「二宮さん!二宮さんオレだよッ!!ここ開けて二宮さんっ!」

 時間なんか気にしてられなかった。
 大声で叫んでた。
 榕子さんとなら直接話せるのに、ラジャさんはあえて、声の聞けないオレに知らせてくれたんだ。
 何が起きてるの。二宮さんに何が。