「ボクはゴウインなやり方、キライじゃないヨ。でも相手をナカセルのはダメ。ソレはアイじゃナイ」
「…意味がわからないな」
「じゃあヒロナリはアイシテもいない人とセックスするの?…ジブンでオカシイと思わナイ?」
理解したのかしていないのか。ヒロナリは大きな音を立てて、ドアを閉めてしまった。
溜息を吐く。まったく困った人だね。
「さっくん、何事?」
声を掛けられて振り返ったら、眠そうな顔のレイシとライチが、顔を覗かせている。
家族に秘密なんて無い方がいい。でも今回ばかりは、アオキのためにも話せない。
「何でもナイヨ。ダイジョーブ」
「…二宮くんのお兄さん、うちに泊まってるんだっけ」
「ソウダヨ」
「どんな人?」
聞かれてもボクには、肩を竦めて見せることしか出来ない。
察しのいいレイシはライチと顔を見合わせて、嫌そうに頷いた。
「わかった、会いたくない。さっくん、帰ったら教えてよ。それまでボクらは、部屋で仕事してるから」
「OK」
「ご飯、よろしく」
ぱたん、と閉まったドア。
ボクは自分も部屋へ戻りながら、トラオミの部屋を振り返る。
キスして、抱きしめてあげるんだよ。少しぐらいアオキに嫌がられても、離しちゃダメだ。
人から受けた傷を癒してくれるのは、やっぱり人だけなんだから。