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思いもよらない人物だった。
二宮には両親と兄がいる。実家は東北。そう千歳から聞いている。
伶志は普段の、何でも面白がるあいつからは想像出来ないような、うんざりした声で「会ってないけどね」と繰り返す。
「モメてるとこだけ、見た」
「誰と」
「…トラ、かな?直接的にはさっくん?原因は二宮くんなのかも」
「伶志…何度も言うが、わかるように言え」
「だって関わりたくないんだよ、正直。二宮くんのお兄さん、さっくんでさえが苦手だと思うような人なんだ。ボクも会いたくない」
「………」
「物音に気付いて、ボクが部屋のドアを開けたとき、ちょうどその人、廊下でトラに手を上げてたんだ」
「虎臣に?」
驚いて、思わず携帯を握る手に力が入る。
どういう状況だ。あの虎臣に限って、会ったばかりの人間に手を上げられるようなこと、するはずがない。
「さっくんが止めに入らなかったらトラ、ヤバかったかも。…帰ってくる気になった?」
「ああ。すぐに用意する。バスの時間と場所を、メールで送ってくれ」
「了解、京都駅に向かってて。出発までもう1時間くらいしかないから、急いでね」
「わかった」
すぐに携帯を切り、千歳の肩をゆする。
まだぼんやりとした目が、俺の姿を映していた。