でもまだオレでは、蓮さんたちに何も追いつけないから。一人で考えてもわからないことは、教えて欲しい。
オレは蒼紀を見つめる。
教えてよ。オレに出来ることって何?
オレがしたいことじゃなくて、蒼紀のして欲しいこと。
「こういうこと、直接蒼紀に聞くのって、ほんとカッコ悪いんだけど。何して欲しい?」
「え…え?」
「蒼紀のために何かしたい。どうしたら蒼紀は嬉しい?…オレ、なんでもしてあげるって言ったよね。蒼紀がして欲しいこと、全部してあげるよ…」
オレの言葉を聞いている蒼紀の顔が、少しずつ赤くなっていく。
……どうしたの?なんでそんな、恥ずかしそうにしてんの。
「蒼紀?」
下を向いてしまった蒼紀が、しばらくしてゆっくり顔を上げた。でもまだ頬が赤い。どんどん赤くなってるみたい。
熱があるわけじゃないよね?
言いにくいのかな。それともオレ、難しいこと聞いてる?
うっすらと唇が開いていく。泣いていたからか、そんなとこまで赤くなってる。
可愛いな。いつだったか伶(レイ)が、蒼紀に赤いエプロンつけさせてたとき。とても似合っていて驚いた。
暗い色の服ばっかり着てるけど、蒼紀には赤も似合うんだ。
「…ぼくは」
「うん」
「ずっと、助けてもらってる…虎臣くんのこと、カッコいいと思ってる、よ」
細い指が、きゅうってオレの服を握る。
そんなオレばっかり喜ばせて、どうするんだよ。
「さっきも、リビングで…兄さんの前で、虎臣くんが手を握っていてくれたの、嬉しかった」
「ほんと?」
「うん」
そっか、照れてるんだ。
耳まで赤くなってしまっている蒼紀、可愛いな。何でもしてあげたい。もっと笑って。
蒼紀の喜ぶことなら、何でもしてあげる。
「じゃあオレが手を握ってたら、蒼紀は嬉しいんだ?」
ぎゅっと手を握って、抱き寄せた蒼紀を見つめる。
自分の顔がキライだって、いつか言ってたよね。あの時は傷つけてごめんね。
だけどオレは、蒼紀の顔、好きだな。
頬にあるそばかすが、素直な蒼紀の性格を現してるみたいで可愛い。真っ黒な瞳も猫っぽくて好きだし。
オレが映ってる黒い瞳は、さっきまで泣いていたせいか濡れて、うるうるしてる。揺れてるみたいだ。
薄く開いてる唇。
赤くなって、甘そうな色で、美味しそうだと思ってしまうくらい。
そんなこと考えてたら、蒼紀の唇がふうっと近づいてきた。ちゅ、って小さな音。
蒼紀が目を見開いてる。
「…え」
「え?…うわっごめん!」
近づいてきたんじゃない!オレの方が近づいたんじゃん!
ちょ、待って、いまオレ、蒼紀にキスしなかった?!