【南国荘U-O】 P:06


 ちゅって、蒼紀の唇を吸って。
 その中にある赤い舌の存在を忘れられなかったオレは、断らずにもう一度唇を重ね、舌を差し入れて蒼紀の柔らかいところ、つついてみる。
 びくって慄いた細い身体。
 すぐに離れたけど、恥ずかしそうに顔を伏せている蒼紀があまりにも可愛くて、もう抱きしめる手を解くことができない。

「ごめん…」
「…ううん」
「イヤだった?」
「…違う、驚いただけ」

 大丈夫、って小さく頷いた蒼紀は、ぼうっとした表情でオレを見上げる。
 バカだと思うし情けないけど、蒼紀のそんな顔を見ていたら、オレの頭の中にはエロいことがどんどん溢れてきて。
 AVとかグラビアとかでしか知らない記憶の中の画像が、光速の勢いで蒼紀の顔に変換されていくんだ。
 どうしよう……これ、すげえヤバい気がしてきた。

「あのさ、オレ。これ以上キスしたら、もう色々止まらない気がするんだけど…」
「う、うん」
「ヤメてほしいよね?」

 っていうかさ、ヤメてって、言ってくれないかな。もう蒼紀に止めてもらわないと、自分じゃ止まりそうにないんだけど。
 見下げ果てたオレの言葉を聞いて、蒼紀は何か考えてるみたい。いいよもう、軽蔑されても仕方ない。
 蒼紀には部屋を出てもらって、オレはこのだんだん熱くなってる身体をなんとかして、それから蓮さんたちに浩成をどうしたか聞いて……って、少しでも冷静になろうと、無理やり考えていたオレは、首を振る蒼紀を見て本気で驚いた。

「蒼紀?」
「…やだ」
「え?」
「やめ…ないで」

 小さな囁きを聞いて、かあっと血が頭にのぼる。自分が何を言ってるか、ちゃんとわかってんの?!
 あたふたと慌てながら、蒼紀の顔を覗き込んだら。こっちも恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして唇を噛んでいたんだ。
 本気……なの?
 蒼紀の身体が震えてる。蒼紀もどうしようって困ってる。
 どくどく激しい鼓動が重なっていて、それが自分のものだけじゃないんだってわかったら、なんだか急に視界が開けてしまった。
 焦った顔の蒼紀を見つめてるうち、オレの心は逆に落ち着いたんだ。

 ……そっか。そうなんだ。
 オレ、蒼紀のことが好きなんだ。

 ぎゅうっと蒼紀を抱きしめる。
 やっと気付いた。どうしてここまで蒼紀の事ばっかり考えていたのか。
 なんで蒼紀を助けられなくて、あんなに泣いたのか。どうして「蓮さんが千歳さんを助ける」ように、オレも蒼紀を助けたいと思うのか。
 当たり前なんだ。好きなんだから。

 夢を見るように千歳さんが好きだった頃とは、全然違う。
 情けなくて苦しくて、だけど自分の中の一番強い気持ち。
 胸がどきどきして、息苦しいよ。