ちゅって、蒼紀の唇を吸って。
その中にある赤い舌の存在を忘れられなかったオレは、断らずにもう一度唇を重ね、舌を差し入れて蒼紀の柔らかいところ、つついてみる。
びくって慄いた細い身体。
すぐに離れたけど、恥ずかしそうに顔を伏せている蒼紀があまりにも可愛くて、もう抱きしめる手を解くことができない。
「ごめん…」
「…ううん」
「イヤだった?」
「…違う、驚いただけ」
大丈夫、って小さく頷いた蒼紀は、ぼうっとした表情でオレを見上げる。
バカだと思うし情けないけど、蒼紀のそんな顔を見ていたら、オレの頭の中にはエロいことがどんどん溢れてきて。
AVとかグラビアとかでしか知らない記憶の中の画像が、光速の勢いで蒼紀の顔に変換されていくんだ。
どうしよう……これ、すげえヤバい気がしてきた。
「あのさ、オレ。これ以上キスしたら、もう色々止まらない気がするんだけど…」
「う、うん」
「ヤメてほしいよね?」
っていうかさ、ヤメてって、言ってくれないかな。もう蒼紀に止めてもらわないと、自分じゃ止まりそうにないんだけど。
見下げ果てたオレの言葉を聞いて、蒼紀は何か考えてるみたい。いいよもう、軽蔑されても仕方ない。
蒼紀には部屋を出てもらって、オレはこのだんだん熱くなってる身体をなんとかして、それから蓮さんたちに浩成をどうしたか聞いて……って、少しでも冷静になろうと、無理やり考えていたオレは、首を振る蒼紀を見て本気で驚いた。
「蒼紀?」
「…やだ」
「え?」
「やめ…ないで」
小さな囁きを聞いて、かあっと血が頭にのぼる。自分が何を言ってるか、ちゃんとわかってんの?!
あたふたと慌てながら、蒼紀の顔を覗き込んだら。こっちも恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして唇を噛んでいたんだ。
本気……なの?
蒼紀の身体が震えてる。蒼紀もどうしようって困ってる。
どくどく激しい鼓動が重なっていて、それが自分のものだけじゃないんだってわかったら、なんだか急に視界が開けてしまった。
焦った顔の蒼紀を見つめてるうち、オレの心は逆に落ち着いたんだ。
……そっか。そうなんだ。
オレ、蒼紀のことが好きなんだ。
ぎゅうっと蒼紀を抱きしめる。
やっと気付いた。どうしてここまで蒼紀の事ばっかり考えていたのか。
なんで蒼紀を助けられなくて、あんなに泣いたのか。どうして「蓮さんが千歳さんを助ける」ように、オレも蒼紀を助けたいと思うのか。
当たり前なんだ。好きなんだから。
夢を見るように千歳さんが好きだった頃とは、全然違う。
情けなくて苦しくて、だけど自分の中の一番強い気持ち。
胸がどきどきして、息苦しいよ。