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キスをやめないでって、困惑しながらでもそう言ってくれた蒼紀の言葉が嬉しい。
だけど先に、やらなきゃいけないことがあるよね。嬉しくても、突っ走っちゃダメだ。
身体がざわざわするの、必死で堪える。伝えなきゃいけない言葉を整理する。
それはこんな状態にあっても、やっぱり口にするのが怖かった。なし崩しに出来るなら、黙っていたいと思ってしまう。
でもオレは昨日、顔を真っ青にして泣いていた蒼紀を、忘れられないから。どう言おうか躊躇うオレなんかより、怖い思いをした蒼紀のために。
伝えなきゃ。
この気持ちは浩成と一緒なんかじゃない。
あんな風に蒼紀を傷つけるなんて、どう考えてもオレには耐えられない。オレの気持ちはあいつと同じなんかじゃない。
真っ直ぐに、蒼紀の顔を見つめた。
「好きだよ」
「虎臣くん…」
「伝えるのが後になって、ごめん。でもわかってほしくて」
「………」
「蒼紀が好きだから、もっとキスしたい。蒼紀が好きだから、もっとオレに甘えて欲しいって思ってる」
どうか、わかって。
あいつとオレを一緒にしないで。
「蒼紀の一生懸命なとこ、ずっと見てたよ。頑張ってるのが心配で、傷ついてるのが辛くて。守ってあげたいのに出来ない自分が、すごくイヤだった」
「………」
「もっといい男になるように、頑張るから。今度何かで蒼紀が悲しい思いをしたら、絶対オレが助けるから」
「虎臣くん」
「…オレを好きになってよ…」
すごい怖くて、でもなんか幸せで、同じくらい逃げ出したい。
今までオレに告白してくれた女の子たちも、オレと同じような思い、してたのかな。好きだと伝えてもらったオレは、彼女たちに酷いことを言わなかっただろうか。
気持ちを伝えることが、こんなにも勇気のいることだと思わなかったんだ。
オレに断られて泣いてしまった子がいたけど、何も知らないオレは、彼女のことを面倒だとさえ思っていた。
でもあの子もきっと、こんな風に必死な思いをして、身体の中に不安を押し込んでいたんだろう。
好きだって伝えたい。本気なんだってわかってほしい。
応えてくれなくてもいいなんてのは、建前だ。本当は同じくらい好きになって欲しいって思ってる。
頭の中がグラグラするよ。
拒否られたら、立ち直れないどころか、この場で泣きだすんじゃないかと思うくらい。
しばらく黙っていた蒼紀が、オレから視線を外して下を向いてしまう。頭を殴られたみたいにショックで、心臓が半分に縮んでしまったみたいに苦しい。
だけど蒼紀は、身体を横にしてオレの胸に寄りかかった。鼻先を柔らかい髪がくすぐって、蒼紀の戸惑いを伝えてくる。
「ぼくで、いいの?」
「…蒼紀がいいんだ」
「でも…ぼくはトロいし、言いたいこともろくに言えないし。おまけに今は無職で、東さんに借金してるくらいなんだよ」