【南国荘U-P】 P:06


「植木鉢を買いに行ってたんだよ。あとで車から降ろすの、虎くんも手伝ってね」
「そりゃ…手伝うけど。また増やすの〜?」

 チトセは精霊と仲良くなるたび、少しずつ庭の植物を鉢に植え替えて、屋敷の中へ移しているんだ。
 そのうち自分たちの部屋がジャングルになるんじゃないかって、前から話しているトラオミは、ちょっとうんざり顔。アオキが咎めるみたいに、袖を引っ張ってる。
 ……いいなあ、みんな幸せそうで。
 南国荘のみんなが幸せになるのは、嬉しいよ。ただちょっと寂しいだけ。
 ボクは溜め息を吐いて、その場にしゃがみ込んだ。

「どうしたの」
「ウラヤマシイ…」

 大切な人と同じ家で暮らすなんて、どんなに幸せなことだろう。
 ヨウコさんにはラジャがいて、レンにはチトセ、トラオミにはアオキ。レイシやライチはどうなのかな……でもあの二人は、二人だけで恋愛とは違う世界を作ってる。
 なんだかボクだけが、一人でいるみたい。
 毎日は本当に楽しいんだけど、やっぱり寂しいよ。大学の授業が始まったら、何かが変わるのかな。

「二宮、ちょっといいか」

 レンがアオキに声をかける。はい?と首をかしげながら応えるアオキは、最近レンに対して緊張しなくなったみたいだ。

「お前、仕事を探してるんだろ」
「はい」
「急な話なんだが、ここの管理をやってみないか」
「……え?」

 話が上手く掴めずに、アオキが戸惑った顔になる。チトセがゆっくり近づいていくのを眺めながら、ボクも腰を上げた。

「今度ね、蓮が新しい仕事を引き受けることになったんだ。けっこう大きな仕事なんだよ。蓮自身は時間を取れないって、断るつもりだったんだけど、僕は絶対に引き受けて欲しくて」
「…はい」
「どうしようか相談してる時に、榕子さんが、いきなり。ね?」

 チトセは苦笑いでレンを振り返る。レンも肩を竦めてるし、事情を知っているのか、お花屋さんも呆れた風に笑っていた。

「ここを下宿屋にしたい、と言うんだ」
「下宿?なに、ここまた人が増えんの?」

 トラオミも驚いているみたい。ボクも驚いてしまった。確かに部屋は空いてるみたいだけど。本当に急な話だ。

「二宮や咲良が一緒に住むようになって、あの人なりに色々考えたんだろ」
「榕子さん、楽しいんだって。二宮くんや咲良くんと一緒に暮らすの。だからもっと人が増えたら、もっと楽しいんじゃないかって」