D千歳
咲良再来日〜蓮と痴話喧嘩
・蒼紀に翌朝までは寝ているよう言って、リビングに下りてきた千歳は、変わらず咲良が蓮を口説いているのに遭遇。
・やめて欲しいけど、割って入るのはあまりに大人気ない気がするし、どうしていいのかわからない。またそんな日々が始まるのか。
・そもそも蓮がちゃんと、咲良を拒絶しないのが悪いのだ。六浦に恩があるのはわかっているし、咲良には日本に知り合いも少ないので、仕方ないとは思うけど。
・子供みたいな嫉妬だと自覚しているから何も言えない。言えない分、苦しかった。
・編集部で同僚の中沢から、最近調子が悪そうだね、と声を掛けられる。ひそひそと言われた「Renさんと何かあった?」
・彼は蓮と千歳のことを知っているのだから、相談したいのは山々だけど。彼に言えばイタリアに住む理子まで筒抜けだ。曖昧に笑って、誤魔化してしまう。
・そんな千歳を、編集長の岩橋が呼び出した。すでに決まっている蓮の取材先、千歳も一緒に行ってくれないかと。
・次の取材先は長崎。蓮との思い出の場所だ。仕事だし、どうせ一日か二日だとわかっていても嬉しくて、千歳はうきうき仕事を済ませ南国荘へ帰る。
・元より定時などあってないような仕事。夜になってから帰ってきた千歳は、ラジャに蓮が仕事場にいることを聞かされ、リビングにいた虎臣と蒼紀に帰宅を告げると、そのまま蓮の元へ向かった。
・仕事部屋にいる蓮は、テーブルに写真を広げて、難しい顔をしている。
・来週の長崎、一緒に行けることになったんだけど…と話しながら蓮の視線を追った千歳は、顔を強張らせた。
・蓮が今日、とあるブランドのメンズライン新作を撮りに行ったのは、知っていたけど。そこに映っているスーツ姿。見間違えようもない、咲良だ。
・呆然としながら尋ねる千歳に、写真を見たままの蓮は「どうしても付いて来るというから仕事に連れて行ったら、向こうのデザイナーが咲良のことを気に入って、急遽撮ることになったんだ」と話す。咲良は構わないと言ったが、六浦になんと言えばいいのか。確かにいい絵が撮れたけど。
・溜息を吐く蓮が振り返ると、千歳は言葉もなく泣いていた。
・咲良が悪い子じゃないのはわかっているのだ。だから、我慢していた。だって自分と蓮は、この南国荘だけじゃなく仕事でも繋がっているから。仕事だけは咲良も踏み込めない、そう思っていたから。でも蓮が被写体としてまで、咲良を気に入ってしまったら。自分では敵わない。
・蓮は千歳を抱きしめて「どうしてお前が不安になるんだ」と話す。蓮にとって一番大事なのは千歳だ。咲良より、家族より、仕事より。
・わかってるし、信じてる。でも感情が制御できない。泣き止まない千歳に、蓮は少し考えて、カレンダーに目をやった。
・長崎取材に同行すると言ったな?元より日程は水曜から金曜。だったらそのまま向こうで一緒に過ごそう。たった二日しかないけど、土日を二人だけで。
・驚く千歳が南国荘はどうするのだと聞けば、蓮は笑って蒼紀や虎臣がいるから大丈夫だと話す。もし大丈夫じゃなくても、一番大事なのは千歳だから。
・蓮の思いやりが、とても嬉しくて。ようやく千歳は微笑んだ。
・「そうだ代休…ねえ、もし代休で月曜も休めたら、もう一日だけ滞在を伸ばしてもいい?週末は人が多いと思うし…」躊躇いがちに千歳が聞くと、蓮は笑って「俺に予定はない。お前がいいなら何日でも」と頷いてくれた。(後半との兼ね合いで、月曜までは南国荘を留守にして欲しいのです)