【南国荘U-プロットE】


E虎臣
千歳の帰宅〜蓮ちー旅行宣言



・洗い物をする蒼紀を手伝うことなく、しかしそばで見守っていた虎臣。どうにもこの人が気になって仕方ないのは、昔の千歳を思い出させるからだろうか。

・そこへ当の千歳が帰宅した。なんだか慌てた様子で、自分にコートと荷物を預け、ラジャに聞いたという蓮のいる仕事場へ直行してしまう。

・苦笑いを浮かべた虎臣は、蒼紀と顔を見合わせた。「…晩ご飯、どうするんだろうね?千歳さん」「うん…でも」「なに?」「会社の東さんしか知らなかったら、あんな風に慌ててる姿、意外だった」ちょっと驚いた顔をしている。

・そのまま二人で蓮と千歳のことを話していると、蒼紀がはたりと動きを止めた。なんだろうと考え、放置された千歳の夕食を片付けていいのかどうか、迷っていることに気付く。
・そのときは「片付けちゃえば?」と言ったけど。とにかく蒼紀は、いつもこんな感じなのだ。



・やるべきことを自分で見つけても、蒼紀は踏み込もうとしないで、動きを止めてしまう。まるで何か悪いことでもするみたいに。どうしても自分の行動を肯定できないのだ。

・誰かが少し手を差し伸べてやれば、安心した顔になるのに。南国荘の住人たちは、みんな優しいものの、基本的に個人主義でマイペース。虎臣にはちょっと歯がゆかった。



・翌日、学校から帰ると、いつものように蒼紀が迎えてくれる。榕子だけのときも嬉しかったけど、蒼紀が待っている毎日が、虎臣にとって最近のお気に入り。

・気持ちは言わなきゃわからない。とくに蒼紀みたいなタイプなら。そう思って咲良が同席していたにも関わらず、虎臣は蒼紀が待っていて嬉しい、と話したけど。蒼紀はなんだか急に悲しげな顔になって、榕子さんとの時間を邪魔してごめんなさい、と言うや否や、いなくなってしまった。

・驚く虎臣の前で、咲良が首をかしげている。咲良には蒼紀の葛藤が全く理解できないのだ。

・自分に自信がなくて、不安なんだろうと話す虎臣。咲良はそれでも不思議そうだ。「ジブンでジブンを愛してアゲルのは、そんなにムズカシイこと?」

・誰かに言われて、やっと気付くこともあるでしょ。虎臣は言うが「でも、オレじゃダメなんだよな」と零してしまう。咲良は笑顔で「じゃあダメじゃないヒト探してみる?」と言っていた。

・ダメじゃない人…と考えて、真っ先に浮かんだのは千歳じゃなく蓮だった。だって蒼紀が悩むのは、いつも家事のこと。ならその責任者である蓮が、何か言ってあげるのはどうだろう。



・千歳も寝てしまった夜中、喉が渇いてキッチンに下りると、朝食の準備をしている蓮に遭遇した。なんてタイミング。

・ミネラルウォーターを受け取った虎臣が帰ろうとしないので、蓮が話の水を向けてくれる。

・不安がる蒼紀に助かっていると言ってやって欲しい。虎臣の言葉に「そんなことは気付いたお前がやれ」と蓮は答えた。

・オレじゃダメなんだ…。落ち込む虎臣を蓮が励ましてくれる。



・なんとかしなきゃな。蓮に相談したことで、前向きに考え出した虎臣。

・後日の(翌日?)夕食の席で蓮と千歳は全員を前に、一週間家を空けると宣言。取材に合わせて二人、長崎旅行をしてくるのだという。

・驚いた咲良はもちろん「ボクもイッショに行きタイ」と言ったのだが、蓮ではなく千歳に却下された。

・「今まで黙ってたけど、いい加減にして欲しいんだ。蓮のことは絶対に譲らない。君でも誰でも、渡さないから。世界で一番蓮を愛してるのは、僕だよ」きっぱり、ばっさり。千歳の最終宣告。「そういうことだな」と蓮が当然の顔で同意した。

・目を見開き、がっくり落ち込んだ咲良がなんだか可哀想で、虎臣は苦笑いを浮かべ頭を撫でる。自分も千歳と蓮の出張を邪魔した過去があるから。咲良が同じことしないように、見張っておくね。

・じっと虎臣を見ていた蓮は、ふいに蒼紀の方を向いた。「二宮、俺がいない間、お前に家のことを任せたい」蓮はちゃんと虎臣の希望を叶えてくれたのだ。