G蒼紀
鎌倉帰り〜浩成来襲
・蓮から家のことを任されたのに、鎌倉行きなんて。本当は断りたかったけど、咲良に押し切られてしまった。
・やっぱりちょっとしんどい。鎌倉から帰ってきた南国荘。その上、普段から接触過多の咲良に抱き上げられて、ぐったりしてしまう。
・虎臣からお茶を出され、ついまた「ごめんね」と呟いた蒼紀に、咲良は「ナンデモしようとスルのは、ナンデモできると思ってるカラ?自信ナイのにアオキはムジュンしてるヨ」とばっさり。青ざめる蒼紀を虎臣が庇ってくれる。
・アンタ、ギリシャの友達にメールすんだろ?部屋行けば。そうでした。咲良はあっさり撤退。
・「あいつってさ、言いたいこと言うけど絶対引きずらないのな。カラカラに乾燥してて、まさにギリシャ人って感じ。そう思わない?」笑う虎臣は蒼紀の隣に座って、心配そうに顔を覗き込む。
・「無理に誘ってごめん。でも二宮さんが、すごく気負ってるように見えたから。なあ見てよ。一日南国荘を空けたって、何も変わらないじゃん。確かに誰も洗濯や掃除してないけどさ。それって明日、二日分やればいいだけだよね?明後日までかかってもいいんだし。二日分やるのが大変なら、ちゃんと手伝うよ」
・「みんなオトナなんだもん。ちょっとくらい大丈夫だよ。唯一のコドモは、ここにいるんだから。ゆっくりやろうよ。蓮さんだって、最初から何でも出来たわけじゃない」あんなに今は料理の上手い蓮だけど、昔は炒め物しか作れなかったんだって。知ってた?
・泣きたいくらい、虎臣の気遣いが嬉しかった。それを教えるために、自分を鎌倉行きに同行させたのか。
・虎臣といると咲良がくっついてくることが苦手で、それを虎臣がわかってくれてると思ってたから、鎌倉同行を誘われたときはちょっと切なかったのに。
・「ねえ…あの、ね」「うん」「明日、日曜日だけど…買い物と洗濯、その…」「付き合うよ、もちろん」「ごめんね」
・「ねえ、二宮さん。オレ、ごめんって言われるより、ありがとうって言われたい」優しい虎臣の言葉に、蒼紀は笑みを浮かべて「ありがとう」と呟いた。
・月曜日、蒼紀は買い物ついでで医者に立ち寄り、南国荘へ帰る途中。
・鎌倉へ行った前より、その後の日曜や今日、月曜の方がちゃんと南国荘のことを出来たように思った。気持ちに余裕が出来たのだろうか。
・それに、なにかと手伝ってくれる虎臣が嬉しかった。いまでもちょっと不安になるけど、ちゃんと虎臣は見ていてくれる。
・ケガもだいぶ良くなった。でも治ったら本格的に仕事を探さなければ。…ケガが治って、仕事が見つかって…そうしたら、南国荘出て行かなければならない。
・そうなってもしばらく南国荘に置いてもらえないか、頼んでみようかと蒼紀は考える。虎臣はなんと言うだろう?彼に相談してみようか。
・中学生を頼りにしているなんて、恥ずかしい。でも虎臣なら…そんなことを考え、明るい表情で南国荘の前まで歩いてきた蒼紀を、背後から呼ぶ声。振り返ると、浩成が不機嫌そうに立っていた。
・凍りつく。まさか、なんで?!
・つかつか歩み寄った浩成は、お前がこんなに愚かだとは思わなかったと、吐き捨てるように言って、南国荘を見上げた。
・いつも明るい南国荘のリビングで、浩成がお茶を飲んでいる。それだけで蒼紀の視界は真っ暗だ。
・蒼紀から連絡がなく、下宿へ行って追い出されたことを知り、そこで教えてもらって出版社へ赴き、クビになったことを知って千歳のことがわかり、南国荘へ来た。榕子を相手にベラベラ喋っている浩成。その上ちらりと蒼紀を見たと思ったら、自分をここへ泊めてほしいと言い出した。
・榕子は答えを出さず、蒼紀を振り返る。「あーちゃんは?それでいいの?」聞かれても答えられない。浩成に「構わないだろう?」と畳み掛けられ、頷いてしまった。
・夜になって、部屋に戻った蒼紀と浩成。リビングで顔を合わせた虎臣が、何度も蒼紀と浩成を見比べて、心配そうな顔をしていた。部屋へ戻るときも、蒼紀を呼んで小さく「大丈夫?」と聞いてくれた。
・思い出したくもない過去が溢れてくる。対処しきれない蒼紀は、浩成に腕を掴まれベッドに押さえつけられてしまった。
・「拗ねるのもいい加減にしろ。女とは切れてやったから、とっとと戻って来い。まったくお前は、くだらないことでオレを苛立たせる天才だな。他の事は何も出来ないくせに」
・相変わらず蒼紀を自分のものだと信じて疑わない浩成。口付けようと近づいてくる顔に、虎臣の「大丈夫?」という声が重なって、思わず突き放してしまう。
・思いっきり頬を張られた。それだけで、もう蒼紀は動けない。「いつまでもオレがお前のワガママを聞くと思うなよ」蒼紀がワガママなんか言ったことはないけど。浩成は無理やり蒼紀を脱がせ、一方的な愛撫を始める。
・「すぐに思い出すさ。お前は淫乱だからな」