柔らかい唇が、だんだんに濡れていく。
応えられないと嫌がるクリスの声は、少しずつ甘く掠れていった。
―――ん…っ、ふ、や…いや…っ
―――クリス…
―――あっ…ん、だめ…やっあ、あっ
何度も唇を重ねる。角度を変えて深く口付ける。
押さえつけていた手を緩め、ほっそりとした指に自分の指を絡めた。息も絶え絶えになっている兄を見下ろして、アルムはたまらずに自分の昂ぶりを、彼の物に擦り付けた。
ひくん、と自分の下で、華奢な身体が震える。
目を閉じて、恥ずかしげに顔を背ける兄の姿に、アルムは少し目を見開いた。
もしかしたら、この人の中にも。
自分が戦っていたのと同じ獣が、棲みついているのかもしれない。
―――愛してる。
―――やめ…っ
―――愛してるんだ。
―――違う…許して…もう…
―――貴方を愛してる。貴方だけだ、クリス…
兄は一瞬、絶望するように睫を震わせた。そうして何かを諦めた表情で、まぶたを上げた。
眦が赤く染まっている。
それをたまらなく綺麗だと思った。
―――こんなこと…許されるはずがない…
―――わかってる。でももう、耐えられない。貴方を愛してるんだ。俺には貴方しか見えない。
―――アルム…
―――どうか俺を受け入れて。貴方に拒絶されたら、俺は本当に死んでしまう。
―――私、は…
―――愛してるよ、クリス。愛してる。
繰り返し囁き続ける。貴方を愛していると、呪文のように同じ言葉ばかり。
辛そうに目を閉じたクリスから、確かな答えが零れる事はなかった。それでも囁き続けたアルムの肩に、とうとう彼は手を回して。
自分の身体に、弟の頭を引き寄せていた。
引き裂くように服を脱がせ、熱い肌が直接触れ合うと、クリスは別人かと思うほど淫靡に乱れた。
アルムの手を導き、甘い嬌声を上げて、もっと欲しいとねだるのだ。
自らかしずき、何の躊躇いもなくアルムのものを咥える。むしろ慌てたのはアルムの方だった。
愛しい兄の手で竿を擦られ、熱い舌先に翻弄されて。きれいな顔が醜悪な自分のものを口いっぱいにほうばっている。喘ぐように息を吐きながら、苦しげに眉を寄せる。
すぼまる頬を見ているだけで、たまらなかった。離してくれとせがむのに、兄は許してくれない。
耐え切れずに吐き出したものを、嚥下する喉元。辛そうに眉を寄せながら彼は、自ら這いつくばり腰を上げて、アルムに入れて欲しいと懇願する。
ろくに慣らしてやる余裕もなかった。
おざなりに濡らしただけで力任せに開き、昂ぶりを押し付ける。痛みに悲鳴を上げた兄は、そこから血を流していたけど。心配するアルムに首を振って、声を掠れさせながら抜かないで欲しいと甘えてくれた。
深く突き上げるたび、クリスの身体は痛がって泣き叫ぶ。それに反して、彼はもっと欲しいと腰を揺らせる。
もっと深く。
もっと奥まで。
酷くして。傷つけて。離さないで。