I咲良
・目が覚めて、いつものようにダイニングへ行くと、妙な空気が流れていた。
・青い顔で押し黙っている蒼紀。腫らした目で心配そうに蒼紀を見つめる虎臣。何かあったのかと聞いたが、虎臣は「なんでもない」と沈んだ様子で答えている。
・そこへ浩成が現れた。虎臣を睨むような顔をしている、不愉快さ全開の浩成。嫌味を言う彼の言葉を遮って、榕子がいつまでここにいるのかと問いかけた。
・困惑する浩成に「蒼紀は南国荘に雇われていて、彼の家事は仕事だ。弟の職場に居続けるのは、おかしいと思わないのか」と、のんびりした口調でしかしきっぱり言い放つ。
・妙な迫力に気おされ、浩成は渋々、今日中に南国荘を立ち去ると約束した。
・榕子から学校へ行くよう促された虎臣に、見送って欲しいと頼まれて咲良は腰を上げる。庭を歩いているとき、虎臣は必死な様子で自分の居ない間、浩成から蒼紀を守ってほしいと嘆願するのだ。
・何があったのかもう一度問いかけた咲良に、言わないと約束したから言えない、と虎臣は苦しげな様子で答える。何か辛いものを抱え込んでいる少年を抱きしめ、咲良は必ず守るよ、と約束した。
※榕子の言葉はJで帰ってくる蓮が言ってもいいかな?と思っています。 榕子なら本気、蓮ならその場しのぎで。その場合はIの段階で、まだまだ浩成は居座るつもりの表現に変えます。
J蓮
・旅行から戻った足で千歳を出版社まで送っていき、南国荘へ戻ろうとしていた蓮は、車から登校中の虎臣を見つける。
・声をかければ、虎臣は青ざめ目を腫らしていて、尋常な状態とは言えない。車に乗るよう言って、テストか何かあるか?と聞けば、何もないという。蓮はそのまま虎臣に学校を休ませることにした。
・昨日のこと(約束したので浩成レイプ未遂は言わないが、蓮は気づく)、自分のことを話す虎臣。
・蓮が千歳を守るように、自分も蒼紀を守りたい。でも何も出来ない。悔しそうに涙を零している虎臣を見て、蓮は「ガキが大人ぶる必要はない」と諭す。虎臣は虎臣らしく、思いのまま動けばいいのだ。
・どうやら落ち着いた様子の虎臣をつれて南国荘に帰った蓮は、さっそく会ったばかりの浩成を叩き出してしまった。
K蒼紀
・ようやく浩成がいなくなった南国荘。とうとう部屋に閉じこもってしまった蒼紀の元を、虎臣が訪ねて来る。
・何も出来なかった。蒼紀にそんな顔をさせたくなかった。役に立たなくてごめんなさい。蒼紀が笑ってくれるようになって嬉しかったのに、また笑えなくなってしまうなら、それは自分のせいだ。自分を責め、謝罪する虎臣に、蒼紀はそんなことはないと首を振る。
・自分を思い遣るばかりに傷ついている虎臣を前にして、蒼紀は自分が努力しなければ変われないこと、蒼紀の不幸は周囲まで傷つけることを思い知る。
・辛そうな虎臣に、蒼紀は昔、自分の身に起きたことをゆっくり話し出した。